速く走り出すための意識。

今日は「動き出しの意識」というテーマを外さないように、このまま書き進めます。

走るという行為については、自分の中では自信を持って指導できるイメージは確立されています。
これまで指導してきた対象者は、例外なくこれまで当たり前だと思ってきた走り方とは明らかに違う体の使い方に驚くとともに、なぜこれまでこうやって走ることが当たり前だと思ってきたのかを、今更ながら不思議だと感じます。

これまでのように地面を強く蹴って、腕を前後に大きく振って、太腿を高く引き上げ、膝から下をできるだけ前に踏み出してストライドを広げるという走り方は、もう二度としたくないし、体がそれをしないだろうと言います。

一人や二人の感想ではありません、すでに150人以上の方を指導してきました。
その全ての方々が例外なく同じ感想を持つことになります。

それでも自分は自分で体験したことしか信じない主義だと言ってくる人がいますが、その考え方を否定するつもりはありませんが、もうそろそろそんなレベルの見識ではなく、なぜ全ての方がそう思うのか、まずは自分で考えブログを読んで研究し実践してみて欲しいと思います。

これまで書いてきたことや指導を受けた方の感想から、ある程度の予想がつかないはずはありませんから。

さて、その走るという行為を指導する中で一番難しいのが動き出しのイメージです。

最初に行ってもらうドリルは、骨盤を縦に使うという、私が歩く走るの基本としているアイドリングという動作です。

私がこの走り方というか体の使い方に行き着いたのは、骨盤に対して大腿骨の骨頭部分が、ストレートに関節しているのではなく、ほぼ90度に折れ曲がった首の部分が腸骨と関節を形成しているという骨格の構造でした。

これは四足動物であればこういう形状でなければ困るわけですが、我々二足歩行の動物に進化してしまってからは、もしかしたらこの首の部分は必要ないと、進化の過程で大腿骨の形状はストレートになっていってもおかしくはなかったと思います。

それがありがたいことにその形状は保たれたままでした。
ならばその形状を十分に生かした使い方を、二足歩行になってからも出来ているか、そこが問題だと考えました。

首を振るような使い方、クランクを使うという言い方をして指導していますが、それを可能にするためには骨盤は縦に動かすことが必要なのです。

その縦の動きに連動して、股関節部分がクランクとしての動きを行ってくれることで、地面を蹴るという感覚なしに、膝が自然に曲がって振り出され、続いて膝から下も筋力を使うことなく振り出されるということが可能となり、我々は重心を移動させるだけで体重を移動させることができて、進みたい方向へ楽に移動することができるのです。

アイドリングの感覚と動きが確認できたら、前に進みたいと思うだけでその目的通りの結果を体が勝手に行ってくれるということです。

難しいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、少し傾斜のある下り坂や階段で、後ろから軽く押されたら体がどう反応するか、このくらいの想像はできると思います。

その下り坂を移動する感覚で、平地も歩いたり走ったりできるということを指導しています。

しかし、平地でその感覚を得ることは、最初はかなり難しいことかもしれません。
これまでそういう感覚を持ったことがないからという理由だけなのですが、固定概念である地面を蹴った反力で体重移動が行われるという思い込みを消すことは容易ではありません。

以前スポーツライターの木崎伸也さんにこの感覚を伝えようとした時、実際にやってみればすぐに分かるからという私の言葉を遮り、実際にやったことも私の動きを見たことも聞いたこともない人に、文字の力で伝えるのがライターとしての私の仕事だからと、なんとか言葉でその感覚を表現して欲しいと粘られましたが、言葉の力は無限ではない、感覚でしか伝えられないこともある、そのうえで文字に書き起こすのがそちらの腕の見せ所でしょうと、最後は実際に走ってもらいましたが、未だに彼の能力を持ってしてもこの感覚を文字にして皆さんを納得できるものには出来ていないようです。

私がこうして言葉を書き連ねても全ての人をどころか、ほとんどの人が理解不能なことなのですから、仕方がないことだと思います。

アイドリングからゆっくり動き出す瞬間が分かると皆さん一様に不思議な顔をします。
いわゆる筋力を使っている感覚がないからです。

狭い室内を自由に動き回り、他の参加者とぶつかることもなく移動できる感覚は本当に不思議で楽しいものです。

そのあと股関節の伸展動作を感覚するためにの「ひきづり」というドリルを行ってから、いよいよ実際に外に出て走るというドリルを行うのですが、頑張らなくても気持ち良く楽にスピードに乗れる感覚まではどなたも到達できるのですが、そこで問題になるのが「いかに速く動き出せるか」というスタートや加速感の部分です。

これまでの常識で言えば、地面を強く蹴ってその反力をえることで、その効果を得ようとしてきたわけですが、そのことが筋肉に過度な負荷をかけ故障の原因となり、スタミナを奪う一番の要因となっているという私の考え方からは、絶対にしてはいけない方法です。

ゆっくりなら動き出せることは分かったが、これでは実践的ではないという感想が聞かれますが、一足飛びに全てが身につくと思ったら大間違いで、先ずはゆっくりした動作で確実に体の動きを身に付け、なるほどそういうことかと頭と体が理解してもらう必要があります。

そのうえで、その動きの連動性を高めていくのです。

言葉としてはギアチェンジというイメージではなく、「連動を行ってくれているモーターの回転数を上げていく」という言葉を使っています。

抽象的な言葉ですが、「筋肉の仕事は骨を動かすこと」なのですから、ここでいきなり爆発的な筋力が必要だと判断して筋力を総動員してしまっては、骨の動き連動は全く意識の外に行ってしまいます。

この骨の連動性を一瞬にして高めることが、素早い動き出しであり、スピードの上げ下げコントロールということになっていくのです。

それは骨盤、左右の腸骨の一番高いところをいかに速く引き上げるかということに尽きます。

そのことが股関節の自由度を高める唯一の方法だからです。

それを行ってくれているのが「広背筋」で、その司令塔が上腕骨の小結節部にある筋肉の停止部位ということになります。

細かい名前を挙げると、またその部分にばかり意識を持って行ってしまいそうですが、とにかく背中をブルンブルンと振り回すと言ったらいいでしょうか、体幹部分の後ろ側を固めてしまうのではなく、背中全体をいかに柔らかく動かせるか、これがすべてなのです。

昨日指導した高校生から面白い話を聞きました。関西のあるサッカークラブでは練習時間のほとんどを肩甲骨を動かせるようになるためのダンスのような動きに費やしていると言うのです。
時間がない時にはボールを蹴らないでダンスばかりやっているにもかかわらず、そのチームはそれなりの実力を持ったチームなのだそうです。

仲間にそのクラブの出身者がいて、その話を聞き、私にその是非を質問してきましたが、とても面白い発想の指導者がいるものだと感心しました。

私も以前社会人野球の指導をしている時、「ウォームアップステップ」と名付けた準備運動のようなトレーニングを、どんな場所に行ってもどんなに時間がなくても40分くらいかけて行わせていました。

その中には野球に必要な体の使い方や走る動作のすべてを盛り込んでいましたので、すべての選手が等しく同じトレーニングを行うことができたからです。

背中全体を柔軟に動かせるようにならない限り、地面を蹴らなければ速く動き出せないという固定概念から脱却することはできません。

そのための「フライングバックトレーニング」であり、「腹筋のように見える背筋運動」なのです。

まだまだ私自身、このスタート動作に関しては向上させなければならないと思っています。

もちろん誰よりも連動動作は出来ているつもりですが、もっともっとその連動性を高めなければ、今以上に速い動き出しはできません。

答えが見つかっているからこそ、その道のりは遠いのです。

継続以外に近道は見つかりません。

まずは理論的な部分で納得し、地道なドリルを繰り返し、実際の走るという行為に結びつけていく、皆さんにも地道な取り組みと継続を期待します。


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Re: ありがとうございました。
さっそく感想をありがとう。
君の好奇心と野次馬根性から起こしてくれた行動を無駄にしないように、親子でしっかり伝えさせてもらいました。
それらが十分に伝わっていることが、文面から伝わってきて嬉しくなりました。
君のサッカー人生はまだまだこれからだと思います。
今回の経験を活かして素晴らしいプレーヤーに成長してください。
またチームメートにも広めてくれれば、必ずチームとしての成長も期待できるはずです。
また良い知らせが届くことを期待しています。
真剣に取り組んでくれてありがとう、これからも頑張ってください。
  • 2016-03-29│22:37 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
ありがとうございました。
先日指導していただいたある高校生です。
最初に好奇心と野次馬根性から電話させていただいた時、自分が何をしたいのか等がわかっておらずご迷惑をおかけしてしまい申し訳有りませんでした。
今回の指導を通して人間本来の体の使い方の一部を知ることができただけではなく自分自身を見つめ直す良い機会にもなりました。
もちろん指導の効果も驚くべきもので(西本さんからすれば当たり前なのでしょうが…)百聞は一見にしかずとはこのことだなと痛感しました。
またこの指導の効果も最初のわかりやすい座学があったからだと思います。
サッカーで重要なのは頭を使いながら走ること
伸筋と屈筋
股関節の構造
骨盤を引き上げて股関節を自由にする
そのために広背筋を鍛える
とてもわかりやすかったです。
まあ合間に挟まれる一対一のぶつかり合い、手をグーにした時パーにした時の比較により頭だけでなく体で納得することができたと思います。
フライングバックトレーニングはブログを読んで文面から想像して行っていてそれはそれでもしんどかったのですが正しい姿勢で行うと想像以上の広背筋への刺激となりました。その後に立つと胸を張るなどの意識を全くせずにいい姿勢が保たれていることに驚きました。
走りでは緩急やスプリントを入れて走って汗をかいているにもかかわらず息が上がっていないという摩訶不思議な経験でした。
ポジションがフォワードということで教えていただいた動きも色んな場面で応用が効くと思います(今日はボールとのタイミングが合わず失敗してしまいました)
今日の試合でも教えていただいた動きができている間はほとんど体は疲れず頭を使えているという感じでプレーできました。屈筋を使ってしまったプレーが続くとふくらはぎやもも裏などが疲れてしまいもっと伸筋を使ったプレーを増やさなければならないなと感じました。
本当に勇気を出して電話してよかったと思える短いながらも濃密な時間でした。このような体験をさせていただきありがとうございました。チームメートにも広めて強くなれるよう精進します。またお手本、車の運転など気配りがよくできる御子息様、ありがとうございました。拙いながらもこれで感想・お礼の言葉とさせていただきます。
  • 2016-03-29│22:24 |
  • ある高校生 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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