東京出張を終えて。

(自宅に帰ってきました。少し加筆と修正を加えます。)

東京駅発12時30分の新幹線に乗りました、広島に帰ります。
今回の出張は、様々な偶然が重なり実現したものでした。

本来の目的は、昨日行われた宝島社のムックというシリーズの一冊の監修を引き受け、その写真撮影に立会うためでした。

立会うと言っても、ただ見ているわけではなく、あらかじめ打ち合わせをしておいた動きを、モデルさんに正確に行ってもらえるように指示したり、その体操がどういう効果があるとか、どんなところを注意して行えば良いのかという、ワンポイントアドバイスをその場で考えることでした。

スタジオにこもって、12時間以上もかけてひとつの本を創るために、それぞれのプロフェッショナルな方々が真剣に意見を戦わせる様は、見ていて怖いくらいの緊張感でした、本当に良い経験をさせていただきました。

という仕事のために東京に来たわけですが、様々な偶然が重なり、一度直接お会いして話を聞いてみたいと思っていた「西原さん」と一緒に、等々力のメインスタンドから川崎対鳥栖の試合を観戦することになりました。

ほんの数ヶ月在籍していただけですが、色々なことがありましたので、まさか自分があのスタンドから試合を見ることがあるとは思ってもみませんでした。

しかし、何時までそんな事を考えても、何も始まりませんので、すでに頭の中はすっかり切り替わっています。

サポーターの方と一緒にスタジアムグルメに並んでシュラスコを買い、誘って頂いた西原さんと一緒に二階席から観戦しました。

西原さんのブログで、私が等々力に来ることや、その際私に対する質問を受け付けるなどという、またまた予想外の展開になりましたが、普段通りに自然体で対応することができました。

西原さんは私とは比べるのが失礼なほど、サッカーに対する造詣が深く、書かれた文章にはいつも感心させられている方でした。

そんな西原さんからの質問も含め、試合中だけでなく、武蔵小杉からスタジアムまでの歩きながらの会話の中で少しずつ説明し、すぐに打ち解けることができました。

全体としての感想というか、なぜ私の言うことが独自とか、変わった視点でとか言われてしまうのかという理由を、今回、西原さんとの会話で我ながら少し納得できたような気がしました。

それは、私が考えていることは、頭の中だけで考えていることではないということです。

多くの選手の動きを見続ける中で感じたことを、動きだけではなく、動いている選手自身の意識の問題まで掘り下げ、本人が気づいていないであろうことも含めて仮説を立て、自分で実際に体を動かしてみて納得できるところまで整理してから言葉にしている私と、そうでない人とでは考え方というか物の見方が同じになるはずはないのです。

過去にも私と同じようなことを言っている人がいるとか、私にしか見えないものがあると言うと、それは思い上がりで他の人にもそれは見えていると言われたことがありましたが、結局は自分が頭で考え言葉にしている人間の動作を、自分の体で検証し自信を持ってそう言い切れているかだけの違いだと思います。

どんなに頭で理解できて素晴らしい言葉に置き換えられたとしても、実際にそれを自分の体でやってみて感覚し、さらには人に見せられるレベルになければ、所詮小理屈だと言われてしまうのです。

だから私は自分で出来ないことは、人には指導しないと言っているのです。

私は選手の動きを見ているというよりは、「感じている」と表現した方が的確かもしれません。

今回の試合を93分間見続けて言えるのことは、間違いなく「大久保嘉人」選手の動きは他の選手とまったく異質のものである、ということでした。

それを説明するためには、目で見える部分で説明し、第三者がなるほどと思ってもらわなければなりません。

ただ、話をしながら感じたのは、目で見えている部分の話をしているうちは、私のすべてを理解できないだろうということでした。

それはなぜかと言うと、先にも書いた、話をしている相手が、その動きの本質を体現したことがないという厳然とした事実があるからです。

少なくとも同じ土俵で勝負は出来ないということです。

そこを説明するのが仕事だろう、という声が聞こえそうですが、そんな簡単な話ではありませんし、そんな仕事をしているわけでもありません。

私は選手の動きを分析して得られた情報をもとに、本人さえも気づいていない体の使い方の意識の部分に対して、私が自分で立てた仮説を、自分自身の体で出来るようになるまでやってみるのです。

出来なければそれは私の中では正しいものとは言えないという判断をするしかありません、お前に出来なくても出来る人はいるかもしれない、そうかもしれません。

しかし、少なくとも今の私の体は、長年行ってきた動きづくりのトレーニングによって、一般人どころかある部分ではプロスポーツ選手をも驚かせる動きが出来るように準備しています。

もうすぐ58歳にならんとする私に、そんなことができるはずはないだろうと思う人はそう思ってもらえば結構ですが、実際に私と一緒にトレーニングをした選手は必ずそう思ってくれます。

実際に自分で動いて感じたことを、別の選手の動きと比較してというか、違いだったり動きの意識の部分も含め、改めて自分の感性で捉えようとするのが私のやり方です。

だから、同じことを出来ない、やったことがない人には伝えきれないのです。

前置きが長くなりましたが、今日はこれまで封印してきた川崎フロンターレの大久保嘉人選手のことを書こうと思います。

なぜ封印してきたかと言うと、彼が神戸から川崎に移籍してきた後、人が変わったように活躍し始め、その後も成長しているきっかけに、私が大きく影響していると思っている人が多くいると感じていたからです。

彼は日本で活躍した後、海外でのプレーを希望し挑戦しましたが、思ったような結果が得られず、日本に帰ってきて、川崎に加入する前年までは神戸でプレーしていたようです。

ようですと言うのは、その時期私はサッカーに興味はなく、ほとんどテレビも見ていなかったからです。

私が川崎に行くと決めた頃、同じく彼も移籍が決まったようでした。

ですから、彼個人に対する思い入れとかがあるはずもありませんでした。

彼が同じチームに所属することになり、どういう選手かと監督である風間八宏に話を聞くと、彼は凄い選手だったが、今は力を発揮できていない、しかし能力は計り知れないものがあるから期待しているということでした。

八宏がそう言うのなら凄い選手なんだろう、というくらいの気持ちしかありませんでした。

1月の早い時期に川崎に行き仕事を始めましたが、私の言葉を誰よりも真剣に聞いて実行に移してくれたと感じたのは、大久保嘉人と稲本潤一だったと私は思っています。

結果的に、移籍してからの彼の動きは、それ以前とは比較にならない、想像もできなかった進化を遂げたと、私が川崎を辞めてから色々な人に言われることとなりました。

しかし、私がしたことと言えば人間としての基本的な体の使い方と、それが出来るようになるためのトレーニングの方法を指導しただけです。

少し加えるとしたら、そのトレーニングがピッチの中の彼の動きとどう繋がっているのかを具体的に話をしたり、練習中の彼とのアイコンタクトで、その動きが今のプレーで出来たか出来なかったかを確認し合ったことくらいでしょうか。

もちろん平等に他の選手にも同じことを教えましたが、向き合う姿勢というか吸収力が、他の選手よりあったと言うか、彼が自分にとって必要としていた要素と、私の伝えたかったことが、マッチしていたということかも知れません。

彼のプレーの特徴というか悪い癖は、感情を露わにしてしまう、今私が使っている言葉で言えば屈筋そのもので体を操ろうとしていた、という事です。

加えれば、彼の体は関節の可動域が狭い、いわゆる「固い体」と言われる典型のような体です。

そのためこういうタイプの選手は、どうしても屈筋の力に頼らざるを得なくなり、力んで無理やり体を使うという動きになっていたようでした。

それを改善するためには、屈筋が今までのように主役として出しゃばらないように、伸筋主体で体が動けるように作り変えてしまう必要があったのです。

それがまさに私が提唱してきた、体づくりから動きづくりへというトレーニングの意識改革でした。

言葉は良くないですが、彼はまんまとこの作戦にはまってくれました。

ウエイトはきついもの、次の日は体が重い、そんな固定概念があった彼にとっては、私の指導したトレーニングはトレーニングではなかったかもしれません。

「こんなんでいいの」、実際に彼の口から出た言葉です。

それは私のやり方を否定したものではなく、あまりに違うやり方に戸惑っただけで、彼自身の体が喜び、動きを変えてくれることが分かってくると、今までの方法をまたやろうなどと思う方がおかしいのです。

私の説明した理論とトレーニングで、今まで無駄に頑張ってきた事を理解し、本来彼が持っていた能力を発揮しやすい体に変えたという事でしょうか。

相手の選手に対して屈筋を使って力勝負をするのではなく、体を固めず相手の力んだ力を利用するコツをすぐに覚えてくれました。

現在、彼の動きの中で特徴的に見られる、ディフェンスを背負った状態から一瞬力を抜いて、動きを悟られないままに相手から離れていくという動き方に気づいている人がいるでしょうか。

言葉で説明するのは難しいですが、私の言う「動きの発現方法の三要素」のうち、「落下」「捻転」を同時に行うという体の使い方です。

これをやられると、もし相手がその動きを知っていたとしても、今の彼の体の使い方の完成度からみて、おそらく対応する事は出来ないと思います。

それくらい見事に自分の体を操っています。

もし過去の彼や他の選手のように、相手を力で押して地面を強く踏ん張ってから動き出すという、既成概念の中でしか体を使えなかったとしたら、相手を翻弄する事ができないばかりか、疲労度は今の3倍くらいはあったと思います。

それを可能にしているのが、股関節を縦に動かして使うという、私と他の人の考え方が最も違う部分です。

股関節に大腿骨はクランク状に関節しているのですから、それを使わないのはもったいないという事です。

股関節を縦に使うという事は、骨盤の後ろ側が上がって見えるくらいでなければ出来ない事です。

それを可能にするためには、広背筋を機能させることが必須条件である、という論本でトレーニングを組み立てています。

この事に関しては、頭が理解できたとか、やり方が分かったというレベルでは絶対に身につきませんし、実際に役に立つ動きもプレーの中で出来るようにはなりません。

広島の青山選手も、私が感心するほどの完成度を見せてくれていたにも関わらず、短いオフの期間を経てシーズン初めには、すっかりその動きが出来なくなっていました。

トップレベルを要求される選手の動きは、それほど微妙なものなのです。

今、少しづつ良い時の動きを取り戻しつつあるところです。

動きづくりのトレーニング、感覚を磨くトレーニングにはゴールはありません。

2人に共通するのは、ボールから遠いポジション、直接プレーに関与していない時の姿勢が良いという事です。

これはイコール骨盤の反りができているという事で、無理に胸を張って良い姿勢を取ろうとしても出来ることではありません。

腰高でフラフラしているようにさえ見えます。

これこそが股関節を縦に使えている証拠です。

その姿勢で常に立っている事ができるからこそ、地面を踏ん張って屈筋を総動員させてという体の使い方が必要なくなるのです。

今回観戦した試合の中でも、大久保選手がフリーになっているシーンが何度もありました。

マークしている選手は彼を捕まえているつもりでも、振り向いたらいなかったというレベルで彼は相手から離れることができます。

私はその動きを、気配を消して消えると呼んでいます。

相手ディフェンダーどころか、味方の選手までが彼の動きについていけないというか反応できず、何度も絶好機にパスが入らないというシーンがあり、彼が味方に対して大きな声で指示しているシーンも見られました。

これはワールドカップの時にも同じ事が言えました。

いろいろ言われていましたが、彼を活かしきれていなかった、彼の動きに対応できる選手がいなかったという見方が、正しいと思います。

もしも青山選手が、その頃に今身に付けた動きを既に出来ていたとしたら、二人のホットラインで得点なんて言うシーンも期待できたかもしれません。

年齢のことを言われたりもしますが、次のワールドカップまでに二人とも成長を続けるでしょうから、改めて二人のホットラインが見られないものかともどかしく思っています。

骨盤を小刻みに縦に動かすアイドリングでその場にとどまり、行きたい方向に意識を向けるだけの重心移動で進んでいける、本当にそんなことが可能なのです。

西原さんにはその事実を何度もプレーの中で伝えました。

もちろんレベルは違いますが、私も同じ事ができます、だから伝えられるのです。

私がチームを離れた後もトレーニングを続けてくれている事を人伝に聞き嬉しく思いました、続けなければ出来たと思っていた動きでも出来なくなるのです。

ただ、誰に教えてもみんなが同じレベルには届きません、指導する側としてはみんな良くなってもらいたいのですか、届く高みはそれぞれ違うのです。

大久保嘉人という選手の持って生まれたポテンシャルを、今存分に発揮しているというだけの事で、私が新たな能力を授けたなどと言う話ではありません。

カープの佐々岡投手にしても、青山選手にしても、元々持っていた能力が頭抜けて高かったのです。

その選手たちが方向性を見失ないかけた時に、私とたまたま出会い、軌道修正ができてしまうと、とんでもない能力を発揮してしまいました。

そういう意味では、私の存在なくして彼らの活躍はなかったかもしれません。

本気でそう思ってくれる人が、私を評価してくれたのでしょう。

月と太陽に例えれば、私は月で、選手が太陽のように熱く光り輝いてくれて初めて、その光の恩恵を受けて私に薄明かりをもたらせてくれるのです。

西原さんの指摘してくれた動きを見るポイントは、皆さんにとってとても分かりやすく、これからサッカーを見る時の見方が一変するかもしれません。

ただその観点だと、それだけでは説明がつかないイレギュラーなシーンがたくさん出てくると思います。

私の視点はズバリ股関節です。

とても小さな動きで、動き自体見えないかもしれませんが、私には見えますし、選手の体がどう動きたがっているのか、その意識を感じます。

だから次の動きにスムーズに移れるし、大きなケガになりにくいかわし動作も可能となるのです。

もう名古屋を過ぎました、だいぶ疲れているので、この辺にしておきます。

西原さん、私との会話を上手にまとめていただきありがとうございました。

今回の私のブログの感想も是非伺いたいと思います。

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感想とトレーニング報告
こんにちは、フロサポ兼西本塾生の阪井徹史です。

等々力でお会いできることを願いましたが、お会い出来ずに残念です。観戦場所が新メインの上層と下層の違いでしたので、なおさら残念です。

さて、大久保選手のお話、自分が考えていたことと照合しながら、注意深く拝読させていただきました。骨盤を起こしている姿勢というのは前から感じていたことですが、動きが軽く見える点や、ミドルシュートを力まずに軽々と放っているなど、目立つ点は感じていましたが、動き出しが静かで速い(消える)という点は分かっていませんでした。言われてみれば、最後のシーンやゴールを決められなかったそれ以前のシーンも、ディフェンダーを軽々と外しています。こういう点を見ていくと、「次元が違う動き」というのが納得です。

昨日のクラシコでも前半の同点ゴールは素晴らしかったです。ケンゴからの縦パスでしたが、FC東京の若手ディフェンダーは「十分に間に合う」と思ったのでしょうが、先にポジションを取られ、身体でボールを隠されて、大久保に楽にシュートを決められていました。「えっ」という感じだったでしょう。

今回の日記を読んで観戦ポイントが増えました。ありがとうございます。

追伸(トレーニング報告)
走り方の改造を続けています。一からやり直す意味で骨盤を起こすことからやっています。FBTなどのトレーニングの際に鏡の前で姿勢を見ると、大久保のような格好には程遠いことを確認し、何とかしようと骨盤を懸命に引き上げると腿裏がパンパンに張ってしまい、思うようには引き上がりません。それで、腿裏のストレッチなどをしながら、腿裏の筋肉が伸びてくれるようにトレーニングしながら(FBTもそういうトレーニングなんですね)、徐々に伸ばしています。こんな感じで良いのでしょうか?

阪井徹史
  • 2016-04-17│17:22 |
  • 阪井徹史 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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