走るという行為の中で、股関節の伸展動作再考。

熊本地方を中心とした大地震は収まる気配がありません。
1日も早い収束と、被災された方々に安心できる生活環境が戻ることを願うばかりです。

第10期の西本塾に参加していただいた山本さん親子、同期の方は覚えていると思いますが、当時中学生で現在静岡学園でサッカーを続けている息子さんと、熊本市役所に勤務されていたお父さんです。

その後は交流がありませんでしたので、ちょうど定年を迎えられる年齢かと思いますが、まだ勤務されていれば、今頃は不眠不休で働いておられるのではないかと思います。

安否をお尋ねするメールを送らせていただきましたが、それどころではない状況だと思います。
実際のところは分かりませんが、静岡に暮らす息子さんの心情はいかばかりでしょうか、とにかくご無事を願うばかりです。

さて、西本塾を終え、改めて走りの実技の動画をチェックしていて気づいたことがありました。

特に今回の参加者3人の方に特徴的に見られたのが、いわゆる「すり足」に見えることです、「忍者走り」と言った方がわかりやすいでしょうか。

アイドリングのドリルから始めて、着地をする側の足を左足とすると、着地は足の裏ではなく股関節で着地をするイメージを持ちながら、右足は後方の地面を蹴って膝を引き上げるのではなく、骨盤の右後ろ側を引き上げながら股関節を伸展させ、お腹を突き出すようになるのですが、そのことによって、腿の前側が引き伸ばされ、膝は後方に置いていかれます。

自然に右膝は軽く屈曲するので、足の甲が伸ばされ、足の裏が後方から見えるようになり、靴の先を引きずることになります。

このドリルを「引きずりのドリル」と呼んでいます。

この動作を確実に行うためには、軽い上り坂を進んでいくようなイメージが必要です、目線を上げお腹も胸も少し上に向ける必要があります。

そうしないと足先を引きずるために、意識して膝を屈曲させたり、足首を花魁道中のように小指側に回しこむローリングの動きが必要となります。

これらはすべて重心が低いために起こる代償動作です。

ここで行う引きずり動作によって、股関節をどれだけ伸展させられるかが、実際の走りでストライドを広げられるポイントとなります。

そういう意味で考えたドリルではあるのですが、塾者の皆さんにはその真意がうまく伝わっていないことに今回改めて気づきました。

一つのドリルとしては真剣に取り組んでくれていますが、実際の動作との関係が今ひとつ理解されていないようです。

もちろん私の説明不足でもあると思いますが、本当に大事なドリルなのです。

屋外に出てその場で行うアイドリングのドリルからやり直してもらうのですが、引きずりのドリルの段階で、既にスピードを意識してしまうのか、さらには屋外ということで靴の先をひきずることに抵抗があるのか、股関節がしっかり伸展させ、膝が大きく後方に置いていかれる感覚がなくなってしまいます。

そこから実際に走るという動作に移行するわけですが、前に進みたい速く走りたいという気持ちが前面に出てしまい、背骨を介した骨盤と肩、肩甲骨の連動をスムーズに行い、回転数を上げるという指示に応えるため、骨盤が上下ではなく前後に動いてしまうのです。

これでは、せっかく大腿骨が腸骨に対してクランク状に関節しているという、人間に与えられた最大の利点を生かすことができません。

スピードはピッチの速さ✖️ストライドという既成概念が顔を出し、とにかく回転数を上げるんだという動きになると、骨盤は前後に動いてしまい、結局は忍者のようなすり足になってしまいます。

アイドリングで身につけてほしい、骨盤と肩甲骨の縦の相関、それによって自然に生まれる膝と足首の屈曲と伸展動作、この動きに重心が前に移動する、体が前方に傾くということに対応して、股関節の動きが起こり大腿骨のクランクが働いて自然に膝が振り出される。

言葉で説明するのは本当に難しく、西本塾生であっても、今この説明が正しく伝わっているのか自信がありませんが、とにかくスピードを意識して回転数を上げるために、一番肝心な股関節を縦に使うということがおろそかになってしまうのです。

これでは一定のスピードしか得ることができません。

後方に膝を残すことで結果としてストライドが広がるわけですから、ただ肩と腰を振り回すだけではダメなのです。

私が練習時間の3分の2はアイドリングと引きずりのドリルに当ててほしいと言っているのはそういう意味です。

実際に走ってしまうと絶対に速く走ることに意識が行き過ぎます。

「ドリルでやった一つ一つの動作を完結させて」とか、「少し飛ぶような意識を持って」というアドバイスを送っているのは、そういう意味があります。

次の足を速く前に運ぼうとして、股関節をクランクではなく、骨盤と一体にして腰を回す動きになっているのです。

広背筋が機能することによって引き上げられた骨盤の後方の部分を、落とすことなくさらに左右に引き上げる、その高さと動きの大きさが大腿骨を後方に振り上げてくれて、自然に前に運ばれ股関節の真下に着地することを繰り返すのです。

今回私も参加者の方の動きにつられて、動きを完結させる前に膝を振り出そうとする動きが入ってしまいました。
忘れないうちに言葉に整理しておきます。

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Re: 質問です。
先ほどアップした記事にも書きましたが、匿名の方の質問にはお答えできません。
また質問の内容が一方的でそのことに関してご自分の考えがきちんと書かれていないものも同じです。
今回の質問は、股関節の動きのことですが、強さとか可動域といった言葉ではとても説明できません。
今日も実際に西本塾で指導を受け、週末の深める会に参加予定の方から動画が届き、前もって動きを見て欲しいとのことでしたが、そう言う方でも動画を見て私の感想をアドバイスこそしましたが、現実として私の考えがストレートに伝わったとは思っていません。
興味を持っていただいたことは有難いことですので、足が流れることと股関節を伸展させることの違いを、是非自分で走って体験し考えてみてください、面白い発見があるかもしれません。
  • 2016-05-16│15:07 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
質問です。
いつも興味深く拝読してます。

どれだけ股関節を伸展できるかがポイント、とありますが、どれだけを意味するのは、強さですか?可動域でしょうか?

後方に膝が残ることで結果的にストライドが広がる。これはおもしろいですね。僕の先生はそれを足が流れるからダメだと言っていましたが、西本さんはどう思いますか?
  • 2016-05-16│14:24 |
  • とおりすがり人 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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