操体・オクタントトレーニング・動きづくりのトレーニング、その変遷(その2)

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ましてや読んでいただくことで、利益を得ているわけでもありません。

自分が思ったこと、考えていることを書いているだけですから、それぞれ感想はあるとは思いますが、好意的なコメントに関しては返信することがありますが、そうでないものに関してはスルーしますので悪しからずご了承ください。

また、個人的なご相談は、その内容がそのまま私の仕事の範囲になる場合、対応しかねますので申し添えておきます。

さて今回は前回に引き続き、西本理論の根幹である操体法オクタントトレーニング、そして動きづくりのトレーニングへの変遷をたどってみたいと思います。

オクタントトレーニングというネーミングは、操体法を発展させトレーニングの効果を得ようと考えて形にし、実際に行いだした頃には、まだ名前がありませんでした。

当時サンフレッチェ広島の選手で、現在JFA地域ユースダイレクター兼トレセンコーチの松田浩君から、「西本さんがやっているトレーニングが話題になっていて、友人でトレーニング専門誌の編集の仕事をしている人間が、取材させてくれないかと言ってきているんだけどどうする」と言われました。

Jリーグ1年目を終えた頃だったと記憶しています。

実はシーズン中にも、あろうことか試合前のロッカールームに部外者が突然入ってきて、私が試合直前の選手に対してウォーミングアップのルーティーンとして行っていたこのトレーニングを見学している人間がいたのです。

選手たちはもちろん、私自身クラブから何も聞いていなかったので驚きましたが、どんな伝手を使ったのか、クラブの偉い人に頼み込んで直接このトレーニングを見学させて欲しいということになったようでした。

今でも思いますが、試合前の緊張した雰囲気のロッカールームの中に、部外者が入ってくるというのはどう考えてもおかしなことで、当然クラブに対して抗議しましたが、注目されていることは良いことだとか言われてごまかされたように思います。

いわゆるフロントの人間たちが、現場を分かっておらず、自分を頼ってきた相手に対して、いい顔をしようということだったのだと思います。

もうひとこと言わせてもらえば、その後何の挨拶もなくその場を立ち去って行く彼らの態度に、もう二度と見学はさせないでくださいと言ったことは言うまでもありません。

そんなことはどうでもいいことなのですが、サッカーの試合に臨むにあたって、タイムスケジュールに沿って限られた時間の中で身体的な準備をしなければならないことは今も変わっていません。

そんな中、鹿島スタジアムではアウェーのチームが試合前ピッチの中でのアップが出来ないという時期がありました。

もちろんホームの鹿島も同じなのですが、鹿島スタジアムはサブグランドが併設されていて、事前にそこを使って体を動かすことが出来ていたようでした。

アウェーのチームはゴール裏の観客席の下にある、テニスコ-トほどのスペースしか与えられませんでした。

芝生の保護というのが表向きの理由だということでしたが、私の立場としては、その狭いスペースの中での短い時間のウォーミングアップだけで、いきなり試合で全力プレーをさせるということでは、試合の立ち上がりの動きがスムーズにいかず、何よりケガをする危険性が高くなることを危惧していました。

そこで数人の選手が日常のトレーニングとして行っていたこのトレーニングを、試合前の短い時間で行うことで、全身くまなく準備オッケーという状態を作ろうと提案しました。

普通にトレーニングとして行う時には15分から20分くらいかけて行っていましたが、それをまさに目にもとまらぬスピードで、一人3分半くらいで行うようにしました。

多いときにはスタメンの11人のうち8人を行わせたこともありました。

試合前の緊張感の中で、ほぼフルパワーで向かってくる選手を、まるで猛獣使いになったように操る私はまさに疲労困憊、選手たちがピッチに出て行ったあとは、しばらく放心状態で動けないほどでした。

当時のバクスター監督が、「グッジョブ」と声をかけてくれて飲み物を手渡してくれるのもルーティーンのひとつとなっていました。

こうして当時のことを書いていると、20年も前のことですがまさに昨日のことのように鮮明に思い出されます。

その頃相手にしていた選手たちのほとんどが、指導者となり立派な成果を上げて活躍する姿を見るのも、私の楽しみの一つとなっています。

風間、松田、森保、高木、片野坂、上野、Jリーグの監督だけでもこれだけの人材を輩出しているのですから、あの頃のサンフレッチェ広島は素晴らしいチームだったことは間違いありません。

外国人もチェコのイワンハシェックやピーターハウストラも最近日本のチームで監督になったと聞きました。

私が広島に呼ばれてきたのは、操体法をベースとして行っていた施術の技術を買われてのものです。
当時の今西総監督からは、「トレーナーが何をするかを考えるのではなく、あなたの腕を選手に対して、ここへ来るまでと同じように発揮してくれればいい」と言われました。

3年間しか在籍しませんでしたが、1年ごとにその約束通りにはいかなくなってしまいました、組織というのは難しいことがたくさん出てきました。

さてそもそも「オクタントトレーニング」とは何かということです。

体の痛みを訴える選手に対して、どこの誰よりも効果を実感させられる施術を行っている自信がありましたが、チームが強くなるためには、そのことだけではとても足りないと思うようになりました。

私を広島に推薦した関係者に、Jリーグ発足時のチームの中で、広島はどのくらいの位置にいるのかと聞くと、「西本さんが頑張って、ベストメンバーがシーズンを通して活躍できれば、真ん中の順位も狙える」という言葉を聞いて、サッカーにまったく興味のなかった私は少し驚くとともに、自分の力でひとつでも順位を上げられないものかと真剣に考えました。

とはいえ、何が出来るわけではありません、痛みを訴える選手たちの体を相手にしながら、なぜみんなこうなってしまうのだろう、もっとちゃんとしたトレーニングがあるのではないか、違う何かがあるのではないか、そんなことばかり考えていました。

ここは素人の強みを存分に発揮して、サッカーはこういうものだからとか、今までこうやってきたからなどという話には耳を貸さず、正しいものは正しいと自分の考えを主張し続けました。

当然責任も重くなります、結果が全てですから。

ある選手は、数値で表せる能力に関してはチームでも1・2を争う素晴らしい身体能力を持っているにもかかわらず、サッカー選手としての能力は、同じポジションの選手の後塵を拝し、1年目はレギュラーでしたが、そのポジションにコンバートされた選手に押し出されるように、2年目はベンチスタートが多くなっていった選手がいました。

1年目から感じていたのですが、彼のとびぬけた身体能力はすべて直線的なもので、機械が測定できる能力では目を見張るものがあっても、操体法を施術する中で感じた「体の連動」という能力に関して、今ひとつ私が満足できないものを感じていました。

操体法の中のいくつかの動きに、抵抗を超えた負荷をかけることで、単関節の運動ではなく、全身の連動がスムーズに誘発される体の使い方を身に付けさせることができれば、彼はもっと良い動きができるようになるはずだ、そんな思いを本人にも伝えながら、一つ一つの動きをどうやって全身に広げていくか、屈筋で生まれる力んだ力ではなく、伸筋を使った効率的な体の使い方とはどういう動きなのか、まさに彼の体を借りて作り上げて行ったのが「オクタントトレーニング」という完成形へと結びついて行ったのでした。

完成形を100とすれば、30くらいの力加減で行えば、ベースになっている操体法の効果をも越えるコンディショニングとして行うことができることも、このやり方の利点でした。

その時々の体調を考慮し、負荷を自在に調整することで、効果は無限に広がっていきました。

「操体法はトレーニングである」という言葉の意味は、このオクタントトレーニングがあってこそなのです。

当時知られることになった、理学療法のテクニックの一つであるPNFとの比較が言われたりもしましたが、私にとっては操体法をベースにした全身の連動動作を効率的に行うための最も理想的な全身運動だと思っています。

ただ形や方法論だけで論じられることは仕方がありませんが、このやり方が生まれて行った経緯や、ベースとなっている操体法を本当に理解していなければ、議論する意味がないので、何を言われても気にはなりませんが。

松田君からの依頼で取材を受けることになった時に名前がなかったので、全身の関節を8方向に動かすという意味で、8を意味する「オクタント」という言葉を使って名付けたのが「オクタントトレーニング」となったわけです。

私のやっていることのネーミングはいつもこんな感じで、間に合わせというか適当なものですので深くは追及しないでください。

当時もこのトレーニングでは筋肥大が起きないということを言ってきた人がいましたが、今も昔もトレーニングイコール筋肥大、体づくりという感覚が支配しているのでしょうね。

「オクタントトレーニング」はまさに動きづくりのトレーニングです。

この発想をそのまま器具を使ったトレーニングにも持ち込むことができなければ、やはりトレーニングはまず体づくりから、そのうえで技術を身に付けるトレーニングがあるという、従来の固定概念を変えることができないと思いました。

そこでそれまで器具を使ったトレーニングで強調していた、重さや回数ではなく関節の可動域重視という指導方針にもう一工夫もふた工夫もしなければならないと思うようになったわけです。

それが、「体づくりから動きづくりへ」という生涯のテーマとして取り組むことになって行ったのでした。

次回、そのことを書いて今回のテーマをまとめてみたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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