筋力に頼らず速く走ることは出来ないのか(その2)

前回アップした記事に応えて、西本塾生の小野さんからコメントが届きました。

この内容に関しては、私自身試行錯誤が続いていて、結論めいたことはいまだに言える状況にはありません。

様々なトレーニングについてと同じ言い方になりますが、目的に応じてそれぞれが正しいと思うことを行うことに対して、私がそれを正しいとか間違っているとかいう立場にはありません。

筋肉を太く大きくしたいのなら、それに適した方法を行えばいいし、競技力向上を目的として行うのならば、私の提唱する「動きづくりのトレーニング」という考え方も試してみる価値はあると言っているだけです。

そしてこの「走るという行為」に関してですが、これこそ様々な考え方があっていいと思います。

前回書いたように、サッカーにおける走るという能力は、たんに走力という能力を超えて、90分間頭と体を動かし続けることができなければ、選手としての能力を発揮することができないことは明らかですから、そういう意味で私の提唱する走り方というものは、大きな価値があると考えています。

西本塾や個人指導に来てくれた人に走るという行為を指導する際には、まずこのことを理解してもらってから、そのために必要な体の仕組みや解剖学的な構造を説明し、体重移動と重心移動の違い、骨盤を前後ではなく上下に動かすという、おそらくこれまで聞いたことがない発想を基礎にした体の使い方の指導へと進めて行きます。

小野さんが実践していく中で気付いてきたことは、指導の中で一番最初に私が伝えたことそのもので、他の人もそうだと思いますが、当初は話を聞いて分かったつもりではいても、最重要項目であるという認識が薄いのではないでしょうか。

そのために、壁にぶつかって初めて、そういえばそういう指導を受けたなと立ち返ってくれるようです。

以下コメントをお読みください。

お久しぶりです、東京の小野です。
いつもブログを楽しく拝見させてもらっています。

今回のブログのタイトルが「筋力に頼らず速く走ることはできないのか」ということで、最近の自分の現状を報告させて下さい。
最近も前と変わらず仕事の昼休みを使って、効率の良い走り方を考えながら走ってします。
いろいろ試行錯誤しながら走っていますが、少し前まで股関節の伸展を意識し過ぎて、後ろに蹴るような走りになってしまい、ふくらはぎを痛めてしまいました。

治ってからも、しばらくこの走り方を続けていましたが、また痛めてしまったので、さすがにこの走り方は体に負担が大きいと思い、改めて走り方を考え直そうと思いました。

いろいろ考えましたが、やはり基本は良い姿勢から体を前に倒す重心移動の動きだと思います。

体を前に倒すと自然に脚が前に出るこの感覚を走りに繋げる。
最近走っていて思うのは、体を前に倒して自然に出てきた脚を前に置く感覚で走ると地面を蹴らずに楽に走れる感じがします。

脚を前に置くと言っても、股関節の真下に置く感覚で置く動作の繰り返しで自然に前に進んで行く感じです。
自分の中の感覚なので言葉で伝えるのは難しいですが、これが今の自分の現状です。

筋力に頼らず速く走るというのは究極の走り方だと思うので、これからも試行錯誤しながら考えて走って行きたいと思います。

それから最後に1つだけ最近気になることがあります。
それは息子さんの走り方や動きです。
西本先生の近くで毎日のように学べるなんて本当に幸せなことだと思います。

自分も負けないように頑張ります!
いつも纏まりのない文章ですいません。
こらから暑くなるので先生も体に気をつけて頑張って下さい。
またお会いできるのを楽しみにしています。


現在進行形で指導している福岡のそら君は、中学に入るまではほとんどスポーツをしておらず、足もそれほど速くなかったようです。

だからこそ私の指導を素直に受け入れてくれて実践してくれているのだと思います。

以前紹介した、西本塾生の中でとび抜けて走りの良かった人がいました、この二人の走りを見て私の提唱する走り方ではスピードが出ないという人はいないと思います。

それくらいのスピードと正しい動きを見せてくれました。

しかし、ほとんどの人は実際にはスピードが出ているにもかかわらず、そのスピードを感じることができないというのです。

その答えははっきりしていて、これまでの走り方がいかに屈筋に頼っていたかということで、体に無理をさせていることがイコール速く走っているという感覚になっていただけのことです。

前回書いたような股関節の伸展動作の連続による、足の運びが出来るようになれば、モーターの回転数を上げるように、股関節と肩甲骨が背骨を介して連動し、四足動物の走りのような滑らかで力強い走り方に近づいて行けると思います。

今、息子智志がその走りをマスターしたいと、一生懸命取り組んでくれています。

形という意味では、指導する側として十分に私の伝えたいイメージを実際に見せることができるようになっています。

智志は学生時代それほど足が速くはありませんでした、今挑戦している走り方で、おそらくはこれまでで一番速く走れるようになっていると思います。

しかし智志は、そんなレベルでは満足していないのです。

この4か月の間にも様々なレベルの選手を指導する機会がありました、そんな選手たちを見ていて、智志は共通するものを感じたというのです。

それは私のところに来る前に、走り方は別としていわゆる足の速い選手は、屈筋の意識を消し伸筋優位で体を使えるようにするためのトレーニングやドリルを行った後、最後にスタートダッシュからスピードを上げて行く際の肘の使い方が共通しているというのです。

共通という意味は同じように見えるというレベルではなく、足を速く動かし、体を速く前に進めるためにはどういう動き方をすればいいのかという、足の速い選手に共通した意識が見られるというのです。

けっしてそれまでのドリルを無視してがむしゃらに走るのではなく、肘を今までのように屈曲させるのではなく、骨盤を縦に使い肘を後上方に引き上げるという基本は正しく行いながらも、個性というかそれぞれが独等な動きでスピードを上げて行くのが分かります。

サッカーは90分間頭と体を動かし続けなければならないのですから、終了と同時にその場に倒れ込むようでは、最後の最後に本来の能力が発揮されているとはとても思えません。

しかし、100mにしてもその他の距離にしても、走っている間にスピードの上げ下げやお互いの駆け引きがあって、400mでも800mでも、スタートからずっと同じスピードで走っているわけではありません。

さらには最後の直線でのスプリント勝負では、短距離の選手と見間違うような凄いスピードで走ることができます。

ですから私が提唱する走りにプラスして、自分の体に少しだけ無理を承知で負担をかけなければならない局面が必ず出てきます。

それでもそこで切れてしまわず、最後まで1番になるために走り続けなければなりません。

筋力に頼らないという意味は、まったく筋力を必要としないと言っているわけではありません。

智志も4か月前、まったく筋力のかけらも感じられない時と、動きづくりのトレーニングを積んだ今とでは、まったく走りが違っています。

これは無駄に頑張る屈筋のトレーニングではなく、あくまでも動きづくりのトレーニングで作り上げられた筋力を使ってのものです。

基本的な筋力が備わってきた今、さらにどういう動きづくりが必要なのか、親子で話をしながら智志のスピードアップを模索しています。

すべて一人でやっていた時には感じられなかったことや見えていなかったことが、智志という人間を指導することで新たな気づきをたくさん得られています。

正しい筋力発揮をしてもらうために、体にどんな刺激が必要なのか、衰えて行くばかりの自らの肉体ではなく、可能性を秘めた若い肉体で効果を確認できることに改めて感謝して、この学びを多くの方に伝えて行きたいと思います。

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Re: No title
島田さんコメントありがとうございます。

コメントにお答えする前に、読んでいただいている読者に島田さんのこと少し紹介しておきたいと思います。
西本塾12期生として昨年6月に初めて私の元を訪れてくれました。

西本塾は受講動機を重視しているという話は何度もしていますが、島田さんから送られてきた受講動機は、文章自体のボリュームこそ多くはなかったものの、私に対する一言一言が熱く届いてきて、こんなに真剣に私のブログや各種媒体の記事を読んでくれている人がいるのかと嬉しくなったことを覚えています。

今回のコメントにもあるように、私が書いた記事はすでに膨大な量になりますが、すべてを10回は読んでくれていると言われるのです。

特に気になる記事はいつでも読むことができるように持ち歩いているそうで、本当に私も身の引き締まる思いです。

初めてお会いした時点で、他の参加者とは違っていて、私の考え方や実践していることを、すでに高いレベルで実行できるようになっていました。

ですから、走るという行為に対しても、本当に驚くほどの完成度で臨んでくれて、私がそこで教えなければならないことは、すべて予習してきたという状況でした。

今でも私から学んでくれたことを自分なりに深め、多くの方に新たな希望を与えていただいているようです。

そんな島田さんから見れば、今回小野さんからいただいたコメントは、少し納得がいかないものだったのかもしれません。
島田さんの言われる通り、小野さんが書いてくれたことは、私が教えていることの基本中の基本で、このブログの中でも何度も同じことを書いてきたつもりですし、直接指導した内容だったはずです。

私から同じように学んでくれたはずの人でも、こうして理解しているレベルや到達しているレベルが違うことは仕方がないと思います。

何も分かっていないとか、今頃何を言っているのかという気持ちは、私にもないわけではありません。
しかしそうさせてしまったのは私の指導力が足りなかったということで、誰が悪いわけではありません。

小野さんのように試行錯誤の過程を、言葉にして報告してくれる人は多くはありません。
私から学んでくれたことがどう伝わっていて、どういう風に生かされているのか、どんな小さな気づきでも、こうして届けてくれることが有難いのです。

島田さんの気持ちは本当に有難いです。
これからはもっと分かりやすい指導ができるように工夫しますし、今計画中の遠隔地の方にも指導が届けられるような取り組みもやっていきたいと思います。

最後になりましたが、お子さんの誕生おめでとうございます。
近い将来、島田さんの一番弟子になることを期待しています(笑)

島田さんの周りが笑顔で溢れますように。
  • 2016-07-08│15:02 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
西本先生

ご無沙汰しております。
西本塾12期生の東京島田です。

今回のブログも自分の事の様に真剣に拝見させて頂きました。
そこで思った事がありましたので、ご連絡させて頂きました。

今回上がっていたブログで東京の小野さんという方のコメント。批判などをするつもりは全くないのですが、以前西本先生がブログに載せていた事や常に伝えている事をまるでそのまま言っている様で驚きました。

同じブログを読み、西本塾にも参加していてこうも捉え方が違うものなんだなと。
正直僕は西本塾参加前にブログを1から10回は読み、気になった言葉などはノートに写し身体で実践していました。初めからすんなりと走り方が出来てしまったのはこの事があったからかもしれません。
なのでブログを必死に何度も読み、自分の身体感覚を大切にして過ごせばそれなりのレベルまではいけるのではないかと思います。

先日、僕のお客様で定期的にランニングをしている60代の方に走り方とフライングバックをお教えしました。
その方はまさに屈筋で走ってしまう方で、ふくらはぎの肉離れも経験しています。今でも肉離れの怖さが残ってしまっている方です。

その方に指導した際、ほんの20分程でしたが1番しっくりときたのがやはり股関節前面の部分を伸ばす感覚でした。
指導後、約1週間この間10キロの大会でしたが自己ベストを更新したとのご報告を頂きました。これからが楽しみです。

私事ですが先月初めての子供が出来ました。
もの凄くバタバタしていまっていて、なかなかご連絡出来ずにいます。
子供の成長も西本先生がおっしゃっていた通り、人間本来の動きを見守っていきたいと思います。

これからも宜しくお願い致します。

島田
  • 2016-07-08│13:37 |
  • 島田健 URL│
  • [edit]
お疲れ様です。
自分のコメントをブログの中で取り上げて頂き、ありがとうございます。
今日は家に携帯を忘れてしまい、仕事から帰ってきて先生のブログを見てみると、自分のコメントがないので承認されなかったと思い、一瞬焦りました。

今日アップされた記事もとても興味深いです。
走る為に使う筋力のことや、速く走る人に共通する肘の使い方など、学ぶことが多い内容でした。
昨日自分がコメントした内容には上半身のことは書きませんでした。
なぜかというと、あまり意識をしていないからです。
正確に言うと、まだそこまで意識を持っていけないからです。
意識しているとすれば、背中の反りぐらいで、特に腕はぶら下がってる感覚で、少し重心が動き始めてから自然な感じで動かす感じです。
上半身もまだまだ上手く使えていないので、また気づきがあれば報告させて下さい。
  • 2016-07-07│23:13 |
  • 小野 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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