人間の心と体に触れるということ。

札幌に出かけている最中の出来事でした。

定期的に私の施術を受けてくれている「Aさん」から紹介を受けたという「Bさん」から、来週の木曜日、明日になるのですが、予約をしたいという連絡を受けていました。

その方は、私は好きな言葉ではありませんが、自らの言葉で、「私は腰痛持ちで、普段は行きつけの整体師のところで揉んでもらっているのですが、今回は自分でもかなり痛みが強いので、いつも以上にしっかり揉んでほしいとお願いして施術を受けたところ、途中で痛みがひどくなり動けなくなりました」、と言われるのです。

半月ほどたって、何とかましにはなったが、人から見てもおかしな動きをしていたようで、友人であるAさんが見かねて私を紹介してくれたということでした。

それが週末、以前と同じようなひどい痛みを感じ、動けなくなってしまったため、木曜日の予約をキャンセルしたいという連絡でした。

さらには、少し落ち着いて楽になったら、また連絡しますと言って電話を切られました。

これが現実です。

私はこんな悲劇を繰り返さないために、いつ自分がその立場になるか分からない一般の方と、そういう人に対応して、少しでも痛みや体の不調を改善してあげる立場の施術者双方に、人間の体の仕組みと対処の仕方を知って欲しいという思いを込めて、「1回5分体が喜ぶ健康術」を著したのです。

このブログにも何度も書いてきましたが、巷にあふれる健康指南書の類は、「どこかを揉めばどこかが治る」式の、お手軽で短絡的なものがほとんどです。

人間の体はそんなことでは改善できない、体を治す整えるということの本質を追及していかなければ、誰の為にも何の為にもならないと、しつこいくらい言い続けてきました。

しかし、そんな言葉は、10年前に本を出させてもらった講談社の担当の方でさえ、「それは正論かもしれないが、一般の読者はまだそれを求めるレベルに来ていない、お手軽お気楽な健康法でなければ、出版社として書籍化して商売にならない」というのです。

私はそんな出版社の売らんかなという姿勢が、現状を作り上げてきた大きな責任があるはずだと反論しましたが、それが受け入れられることはありませんでした。

このブログのタイトルである、「生涯一トレーナー西本直が話しておきたいこと」が、まさにこのことなのです。

私が施術者としての道を歩もうと決めてから、たとえどんな状態になっている人であっても、少なくとも現状よりは良くしてあげられる、100の痛みを抱えてきた人でも、たった1つ減らして99であっても、絶対に改善の糸口は見つけられたと、自他ともに感じられる施術を行えるようになったと、自分の技術に自信と確信を持って仕事として行ってきたつもりです。

今回のAさんのこと、まだこんな施術を行っている人間がいるのかと悲しくなりました。

いくら普段からAさんの体を触っているとはいえ、Aさんから今日はいつもと違い痛みが強いから、いつも以上にしっかり揉んでくれという言葉を真に受けて、言われるままの施術をして、Aさんの症状を悪化させた自分の行為を恥じることはないのでしょうか。

Aさんがそうしてくれと望んだから、そうしただけで、自分は何も悪いことはしていないと思っているのでしょうか。

施術者として、相手の体を改善することが目的ではなく、自分が学んだある一定の手技を施すのが仕事だと思っているのでしょうか。

今回のようなことは過去にも何度も経験していて、その度に私が言うことは、「こんなに酷くなったのは私のせいではありません、その原因がはっきりしているのなら、そこへもう一度行って治してもらってください」、という言葉です。

しかし私の知る限り、「こうなってしまったのはあなたの施術のせいです、何とかしてください」と、文句を言って駆け戻って行く人は聞いたことがありません。

もちろんそんな目に合されたところに、もう一度行きたいと思う人はいないでしょうから当然のことではありますが、文句の一つは言っておいてもらわないと、施術した側は、自分が施したことを間違いだと気づくことも出来ないのです。

そんな状態になった人に、駆け込まれる身にもなってくれと言うことです。

私がいつも口を酸っぱくして言う、「木を見て森を見ず」「枝葉の技術を追い求めるな」と言うのはそういうことです。

〇〇法、〇〇テクニックを学ぶのではなく、人間の体の仕組みと、どうやって動いているのかという本質を探る以外に、それに対応する技術など身に付くわけはないのです。

私の本は一般の方向けの健康指南書の体をなしていますが、本当に読んでほしいのは施術する側の人間なのです。

Bさんは今回のことで、痛みが強いときには施術行為を受けない方が良い、いや受けてはいけないという気持ちになったと思います。

丁寧な方で、今日改めて同じ趣旨の連絡があり、明日のキャンセルを確認してきました。

これまでの私なら、「しばらくして、もう少し楽になったら改めて予約しますと」いう言葉を遮り、「痛くなくなったのなら私のところに来ていただく必要はないでしょう、痛いから来るのではないのですか」と、言葉を返したと思います。

しかし、今のBさんには何を言っても分かってもらえないと思います。

「今の状態で詐術を受けたら、また酷いことになる」、私のことを知らないBさんに、これ以上何を言っても始まりませんから。

結局これが現状なのです。

本当に困った時にきちんと対応できる施設がない、体に不都合を感じたら、痛い所を揉んだり叩いたり突っついたりしてもらうことが施術だと思い込んでいる一般の方々、その要求にさえ応えていれば事足りると思っている施術者を自認している人間たち。

「何を偉そうに、自分はお前以上に技術を持っている」、自信を持ってそう言い返してくれる施術者が、一人でも多くいることを願うばかりです。

施術行為、人の体に触るということは、人の心に触れるということです。

一人でも多くの方にこの感覚を伝えて行きたいと思います。
そのために書いた、「1回5分体が喜ぶ健康術」を、もっとたくさんの方に読んでいただきたいと切に願っています。

そして今回登場したBさんが、いつか私の元を訪れた時に、本当の意味での体の仕組みと、痛みの本質、そして体が治って行く過程を知っていただきたいと思っています。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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