トレーナーという立場に求められるものと、私が目指しているものの違い。

毎日様々な出会いの中で、日常の日々が過ぎて行きます。

様々な形で私の存在を知り私の元を訪れてくれる人たちに対して、私の持ってる技術や経験の中から、その人それぞれに対応しています。

そんな中、週の終わり、昨日の土曜日の最後の時間帯を予約してくれたのは、ブログを見て興味を持ってくれたと言って電話をしてくれた人でした。

朝から忙しく、息子とともに「さあもう一人ラスト頑張ろう」と気合を入れて迎えたその方は、広島に住んでいて私のようにスポーツに深くかかわっている立場としては知っていて当然のはずの方でした。

しかし申し訳ないことに、私はそのスポーツにはまったく縁がなかったので、名前を聞いても顔を見ても、まったく気づくことはありませんでした。

受付票を記入していただき、来所の目的の欄に競技名が書かれていましたが、それでも私は「どんなレベルでやっているのですか」と、まるで趣味で行っている人を相手にするような聞き方をしてしまいました。

先に息子が気づき、「父さんこの人見たことある」と言われ、チーム名を言われて初めて気付く有様でした。

それでも失礼なことに、私はさっぱりその方のことが分かりませんでした。

本人の了解を得ていませんので、個人が特定できる表現は控えさせてもらいます。

そこから色々な話が始まりましたが、話を進めて行くうちに私のテンションはどんどん高まっていきました。

私はこれまでスポーツトレーナーという立場で、チームや個人に関わってきました。

その時々肩書きは変わり、神戸と川崎ではトレーナーという立場ではなく、フィジカルコーチという立場で仕事をさせてもらったこともありました。

しかし、私の経歴を知っている人たちが私に求めることは、やはりトレーナーとしての技術や経験の方に重きを置かれていたように思います。

スポーツの世界でトレーナーと呼ばれている立場の人間に対し、組織や選手たちが何を求めているか、おそらく数十年に渡って何も変わっていないような気がします。

コンディショニングの一環と言う聞こえの良い言い方で、選手に対する疲労回復を目的としたマッサージと言う行為が、求められていることの最上位であることは否定できないと思います。

今行われているリオデジャネイロオリンピックに帯同しているトレーナーという立場の人たちも、おそらくは選手に対するマッサージが主な仕事だと思います。

この関係はいつから始まったのでしょうか、そしてトレーナーと呼ばれる職業を目指している人たちは、その事実をどれだけ認識しているのでしょうか。

「もちろん知っています、そういう立場を目指しています」、と言うのであれば、私がとやかく言うことはありません。

組織や選手からの要望がある以上、そういう行為をメインにする仕事があることは否定しません。

しかし、そのマッサージと言う行為が本当に選手のコンディショニングや疲労回復という目的に対して、最も効果的な方法なのでしょうか。

施術する側も受ける選手も、そしてそれを雇用する組織も、みんながそう思っているのでしたら問題はありません。

そうだとしたら、その立場の人間を指してトレーナーという呼称は正しくはないような気がします。

辞書でトレーナーという言葉を調べると、一番先に出てくるのは「練習の指導者」とか「訓練する人」という意味です。

日本ではこういう立場の人は、基本的に「コーチ」と呼ばれていますから、言葉の意味としては、正しくないことになります。

ボクシングの指導者が「トレーナー」と呼ばれていることはよく知られています。

Jリーグ発足時にもトレーナーという呼称は、指導者としての意味合いが強いから「マッサー」という名称にされかけていました。

当然、「我々はマッサージだけをする人間ではない」、と異論が出て、詳しい経緯は知りませんが、トレーナーで落ち着いたようです。

それでも雇用する組織の側は、選手に対して言われるままにマッサージを施し、ある意味慰安的な行為を施すことを当然のように求めています。

私はそういう形の仕事がスポーツトレーナーだということを知りませんでしたし、そういうものを目指していたわけでもありませんでした。

それが縁あってJリーグ開幕時に広島から声をかけていただき、この世界に足を踏み入れましたが、その時にクラブのトップであった今西さんから言われた言葉は、「あなたが宇和島で行っていたことを選手のためにやってください」という言葉でした。

私が故郷宇和島で開業し、一般の方や学生相手に行っていたことは、当然ですがたんなるマッサージや慰安的な行為ではありませんでした。

痛みの原因を追究し、痛みを改善する方策を施し、またなぜその痛みが出たのかという根本的な体の使い方やトレーニングの方法までアドバイスしていました。

その活動が評価されてプロの世界から声がかかったのだと思っていました。

あれからすでに20年以上の月日が流れました。

しかし選手とトレーナーと言う関係はまったく変わっていないどころか、あの頃以上に鮮明にマッサーとしての色が濃くなっているように思います。

加えて何百万円もする医療機器を用いての電気治療の操作方法がうまいとか、テーピングが速くきれいに巻けることが良いトレーナーで、選手との良好な関係を維持できることも大きな評価の一つになっています。

私が故郷にUターンして、せっかく軌道に乗りかけた施術所をたたんでまで勝負の世界に飛び込んだのは、自分の力がチームの勝利に貢献できると考えたからです。

選手一人一人の体調を整え、技術や体力の向上を図り、監督の思い描く戦術をピッチの上で表現できる選手を作ることに、私の力が発揮できると思ったからです。


これまでいくつかの環境で仕事をしましたが、選手や組織の意識は変わっていません、自分のために多くの時間を割いてくれるトレーナーが選手に一番好かれるということです。

私はその選手の能力を向上させるために、最も効果的な方法を探し提案してきました、ただ体を触ってもらえば満足などという選手は相手にしませんでした。

当然反発もありましたが、チームが勝つためにはどちらが必要だったか、現役時代に文句を言っていた選手でも、立場が変わり監督コーチになると分かってくれるようでした。

それほど勝負にこだわっていました、だから私は世間が思っているトレーナーではなかったかもしれません。

そういう意味では、このブログのタイトルも変えなければならないかもしれません。

しかし、私が「生涯一トレーナー」と名乗っているのは、私が本来の意味での人を導き育てる「トレーナー」であり続けたいと思っているからです。

そんな私の元を昨日訪れてくれた選手の口からは、これまで私が求め続けてきた選手としての心構えと言うか考え方というか、まさに私が乗り移ったような話を次々としてくれるのでした。

年齢的にもチームの中心選手としてベテランの域に達している彼は、当然体の故障とも戦い続けてきたわけで、その対処方法としてチームのトレーナーが施してくれる行為が、本当に自分の体にとって効果的なものだとはとても思えない、施術後「どうですか」と問われても、一生懸命やってくれた相手に対して感謝こそすれ、体に変化があったかと言われても答えようがないというのです。

申し訳ないですが、おおきな変化をや効果を感じなかったということです。

トレーニングに関しても同じで、専門のコーチが指導する内容を必死にこなしているが、若いうちは何とかこなせていても、年齢とともにそれがきつくなり、何よりなぜこのトレーニングを行うのか、どういう目的でどういう効果があるのかなど、まったく説明もされていないし考えたこともないというのです。

指導する側される側、双方ともこれだけ頑張ったのだからという自己満足にすぎないのです。

改めて言いますが日本のトップリーグの選手です、ただ漠然と日々を過ごしてきたはずはありません。

その疑問や不満から、私のブログにたどり着き、そして直接訪ねて来てくれたというのです。

私から受ける施術で、初めて体のバランスや連動と言う感覚を知り、体が整っていく動きやすくなっていくという感覚を実感してもらうことができました。

その後、こちらからお願いして、伸筋重視で行う「動きづくりのトレーニング」のさわりを体験してもらいました。

現役アスリートから見れば、ただ背の高いだけで細身の息子が、自分と同じ重量で正しい動きを淡々と行う様子に驚くとともに、自分たちが行っているトレーニングの間違いにも気づいてくれました。

すぐに変えられるものではありませんが、長年疑問に思ってきたことの答えを見つけられたと笑顔で帰って行ってくれました。

このブログ、書き始めて3年以上が過ぎました。

その時々、頭の中に浮かんだことを、思いつくままに言葉にしてきましたが、一般の方だけだはなく、こうしてトップアスリートの方のなかにも、真剣に読んでくれている人がいることを知り、嬉しさとともに大きな責任も感じることとなりました。

いつかそういう選手が指導者になった時、必ずやスポーツの世界が変わる日が来ると信じています。

それがいつになるかは分かりません、その日まで私が今のように発信し続けられるかも分かりませんが、今まで通り、誰に語りかけているわけではありませんが、読んでくださっている方がいる限り、自分の言いたいことがある限り、言葉を綴って行こうと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月9・10日に予定しています。

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