痛みを感じるのは体そのものか、それとも「心」の問題か。

20代半ば、ある方との出会いから、私は人間の体そのものに興味が湧き、痛みとどう向き合うかを追及してきました。

専門学校に通い、鍼灸師という資格を取るための勉強をしましたが、痛みというものをどう捉え、どう向き合っていくかという問題は、まさに人それぞれの考え方の違いによるところが大きいことを痛感してきました。

32歳で開業した当初は、目の前にいる人間の体が発する痛みをどう軽減させるか、そのことで精いっぱいだったように思います。

あれから26年、仕事として人間の体と接し来た中で、私なりにいろいろなことに気づかされ、様々なことを学んできたと思います。

まず言えるのは、人間の体に接するときにいわゆるマニュアルは通用しないということです。

それをきちんと理解していれば、これまで記事にしてきたように、自分にまかせておけば悪いようにしないからと、自らが学び日々使っている施術方法を無理に当てはめ、痛みを軽減させるどころか、さらに悪化させてしまうという、最悪の事態は起こらないはずです。

しかし、現実にはそういう例は後を絶ちません。

現在の私は組織を離れ、個人を相手に仕事をしています。

今の仕事を始めて26年と言いましたが、本当の意味で個人だけを対象として仕事をするのは、広島に来る前、宇和島での2年間と、現在の施設を作ってからの3年間ということになります。

その間の20年間は、基本的にスポーツの世界に身を置いてきました。

今改めて一人一人の人間の体と向き合っていると、人はなぜ痛みを感じるのかという本質的な部分を考えざるを得ません。

同じ痛みと言う感覚でも、我慢強い人もいれば、ちょっとしたことでもすぐに口に出してしまう人もいます。
皮膚が感じるような外的な刺激は、一時的なものが多く、時間が過ぎれば多くの場合消失してしまいます。
熱い冷たいや、ちょっとした接触による痛覚の問題です。

しかし、度を超えたそういう感覚は、体の防衛反応を生むことになります。

私が言う、屈筋を収縮させ体を固めるという反応です。

それが一時的なものであれば、すぐに緊張は解け、元の状態に戻るのですが、自分にとって普段感じることのない大きな痛みであれば話は違ってきます。

痛みを感じた部分がさらに大きな痛みを感じることがないように、体の他の部分が、痛みを感じた部分を守ろうとしてくれます。

本来頑張らなくてもいい部分が、普段と違う筋肉の収縮を行い続けてくれることになります。
こうなると自分の体が自分の思ったようには動いてくれなくなり、いわゆるバランスの崩れた状態とか、体に歪みを生じた状態となります。

そうやって人間は痛みに対処しているのです。

我慢できているくらいの痛みなら、そのうち何とかなるだろうと放置する場合もあれば、その時点で大きな問題ととらえ、自分の体はどうにかなってしまったのではないかと、医療機関に駆け込む人もいます。

そういう人が求めているのは、痛みの解消であることはもちろんですが、自分の体のどこにどんな異変が起こっているのかを客観的に知りたいという気持ちもあるのだと思います。

腰痛で私の元を訪れる方の中にも、医療機関で腰椎のヘルニアと診断され、それが悪さをしてときどき痛みが出るのだとと言う言い方をする人があります。

ならばそれを指摘してくれた医療機関で治療を受ければよいのですが、ほとんどの場合治療とは名ばかりのリハビリを受け続けることになるので、長続きしないか、はなから診断だけを受けて通院を止めてしまう人もいます。

そういう人に限って自分の腰痛を自慢と言う言い方は可笑しいですが、だれかれ構わず腰痛持ちであることを公言したりするようです。

私に言わせればこういう方はたいした問題ではないと思います、なぜなら普通に仕事もバリバリこなし、趣味のゴルフは私の何倍ものラウンド数をこなせているのですから。

あまりに腰痛を自慢されるので、ならばこういう人がいるから行ってみたらと勧められて、私の元を訪れる人は、ほんの数回で来られなくなります。

自分が言葉にしているほどの状態ではないですから、私にたいしたことは無いですよと言われることが気に入らない人もいます。

それでもこういう方はどこに行っても自分の腰痛は治せないと、またまた周りの人に自慢して歩きます、そういう方は皆さんの周りにも必ず一人や二人はいると思います。

こういう方は別として、日常生活にまで支障をきたすような体の痛みに苦しんでいる方も、本当にたくさんいらっしゃいます。

同じように医療機関から始まり、代替医療と言うか、鍼灸やマッサージ、またその他の整体と言われるような施術を、本当に心配してくれる方たちが勧めるままに、一生懸命通ってこられたり、自分で本を読んだりネットで調べて、良いと思われることは何でもやったという話も聞きます。

医療機関では痛みの部位を特定し病名が付けられることもあれば、診断の結果としては特に異常は認められないと言われることもあります。

それでも本当に自分の体には強い痛みがあり、人には言わなくても日常生活にまで支障をきたし、中には一日の大半を横になって過ごしているという方がいることも事実です。

最近そういう方が何人も来られました。

現実として体がこわばり、施術を行うベッドの上で仰向けになって横になっていただくことも辛そうな方がいます。

痛みのせいで、眉間に深いしわが刻まれた方もいます。

何年も何十年も苦しんでこられた結果だと思います。

ところが施術を始めると意外にもそういう方の体が、私の誘導にかかると不思議なくらい自由に動きます、人間の基本の動きである、骨盤と背骨を基本とした6方向の動きを、ある意味苦も無く表現してくれるのです。

私が出来ることはその6方向への動きがスムーズに行えるように、体全体が無理なく連動してくれるように誘導していくことです。

それが今、現実に失礼ながらとてもまともだとは言えない状況となっている体が、ちゃんと動いてくれるということはどういうことなんだろうと思うくらい、痛みもなく動いてくれるのです。

もちろん可動域の問題はありますが、これくらい動かせれば日常動作にはまったく問題はないはずだがと、私の頭の中は少し混乱をきたすことになりす。

大袈裟に痛がっていたわけではありませんが、現実に立った姿勢や歩く姿はとても辛そうで、仰向けに横になってもまったくリラックスした感じはありませんでしたから。

そんな体が6方向に動く、それはなぜなのでしょう。

「自分の体はもう普通ではない、自由に動けない動かせない、動かすと痛い」、どこに行ってもそう言われてきたし、自分でもそう思ってきた、だから動かせないし、動いたら痛みが出るから動かしたくないという、負の連鎖が続いてきたのだと思います。

人間の体はどういう風に動くようにできているのか、どこが固い、どこの動きが悪い、どこが痛みを発している、だからだめなんだ、そういうどこかの誰かに言われたことを、すべて信じ込まされ、自分の体の声に耳を傾け対話するという、最も基本的な対処方法を行うことができなくなってしまったのです。

権威ある人間の言葉、専門家を自認する人間の言葉、みんながそう言っている、そう思っているという固定概念や既成概念に縛られ、誰の体でもない自分の体と向き合うことを忘れてしまったのです。

「どこかを揉めばどこかが治る、この痛みは別のどの部分から来た、とりあえず楽になったような気がするが、この感覚はどれくらい持つのか」、もう聞き飽きるほど聞かされてきた言葉です。

それらの一つ一つに答えながら、人間の体の仕組みの本質に少しでも気づいてもらえるように話をします。

体の痛みに対処するのが仕事で、少しでも痛みを軽減して欲しいと施術を受けに来ていただくのですが、私が本当に行わなければならないことは、そういう固定概念に縛られた「心」を解きほぐしてあげることなのではないかと思います。

以前から使っていた、少し乱暴な言い方ですが、「頭の悪い人は治らない」と言うのはそういう意味です。

固定概念から離れることができず、自分の体を道具のように扱っている人の体は、けっして報われることがありません。

現実にそういう方は数多くいます、心を開くという作業は単なる技術では出来るはずがありません。

そういう方の心を開かせることができない私は、まだまだ未熟だと言うしかありません。

「自分の体と対話する」そのきっかけを作るために、『1回5分体が喜ぶ健康術』を書きました。

毎朝見ているNHKの朝ドラ「ととねえちゃん」、いよいよ最終周を迎えていますが、唐沢寿明演じる花山伊三次が病床で、自分が死んだらこの言葉をあとがきに書いてほしいと口授筆記させた中に、「あなたの暮らしの読者の皆さんお一人お一人が、周りの方を一人でいいから読者になって頂き本を購読してください」という言葉がありました。

27年間広告に頼らず、自らが信じる雑誌を創り続けてきた人間にしか言えない言葉だと思います。

私も同じ言葉を今この記事を読んでくださっている皆さんに言いたいと思います。

「もうどこを揉めばどこが良くなるとか、何かをすればすべて事足りるという考えを離れてください。私が提唱することはある意味では枝葉の部分になっているところもありますが、それをきっかけとして体と対話する、自分と向き合うという姿勢に立ち返ってほしいのです。」

そういう人が一人でも増えてくれることが、これからの超高齢化社会で生きて行くために必要な、健康長寿という理想に近づける唯一の方法だと信じます。

どうか、私の本を周りの人に勧めてあげてください。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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