走るという行為、素速い動き出しと「アイドリング・ステイ」の概念。

広島地方、久しぶりに気持ち良い秋晴れの空が広がっています。
昨日は台風の影響で、強い風が吹き、自転車通勤で利用している港公園の駐輪場の自転車は軒並み倒されていました。

今夜はサッカーのW杯予選が行われますが、ちょうどその時間帯は学生を相手のトレーニング指導を行っていますので、帰ってからゆっくり録画を見ようと思っています。

私がサッカーの試合を見る視点は限られたものとなります。
いわゆるサッカーをよく知っている方々のように、戦術的な解説やフォーメーションといった部分は、私には分かりませんから。

では、私が何を見ているのか、それは選手の動きそのものです。

当たり前ですが、サッカーはボールを蹴る競技です。
ただ、フリーキックの時のように、誰の邪魔されることなく、自分の思った通りに蹴るという動作をすることはほとんどありません。

走りながら動きながら、ボールを受け、コントロールし、ドリブルで運んで行ったり、パスやシュートといった蹴るという行為を行うことになります。

もちろん味方の選手だけではなく、相手の選手もいるわけですから、自分の持っている技術をそのまま発揮することは簡単ではありません。

そんな中で、いかに自分の能力を発揮し続けることができているか、私はそこを見ています。

選手としての経験はまったくなく、数多いスポーツ種目の中でも、特に興味があったわけではありませんでした。
そんな私ですが、広島と神戸で4シーズン仕事をさせていただきました。

その時にも、サッカーそのものに興味を持ったというより、あくまでも選手個人の体を相手の仕事に終始していたと思います。

もう4年前になりますが、久し振りにサッカーの仕事をすることになった時、それもトレーナーとしてではなく、トレーニングコーチという肩書きで仕事をして欲しいというオファーを受けた時に考えたのは、私の能力をチーム力向上のためにどう活かすかという問題でした。

色々なことをやりすぎてきましたから、的確な言葉ではないかもしれませんが器用貧乏にならないように、しっかり目的を絞った仕事をしたいと思いました。

そこで浮かんだのが、「90分間走り続けるではなく、90分間、頭と体を動かし続けることができる能力」という体の使い方を指導することでした。

サッカーでよく言われる「足が止まる」という現象は、そのまま失点に繋がり、攻撃の形を崩します。
私が切り込めるのはこの部分だと思いました。

具体的なことは過去の記事で何度も私の考えを書き綴ってきましたので割愛しますが、負荷を高め量を増やすトレーニングをしても、このテーマを克服できないことは古今東西歴史が証明していると思います。

ではどうするか、私がおかしいと感じたトレーニングや体の使い方から逆算し根っこをたどっていくと、走るという行為を人間が行うためには、こんな体の使い方をすれば良いのではという結論めいたものを見つけたのです。

皮肉なことですが、それを発揮しようとしたチームを離れた後、これまで名前すら聞いたことがなかった、世界のスーパースターたちの動きを見続ける機会があったことで、私の考えは間違っていなかった、いや正しかったと自信を持って思えたのでした。

西本塾や個人指導で伝えられたのは、その一部分、基本的な考え方や体の使い方でした。

それができるようになるためには、理論的な部分を理解してもらうことはもちろんですが、そういう体の使い方ができるようになるための、最近使っていることばですが、「動きづくりのためのトレーニング」を、継続して行うことが必要なことも当然のことです。

今指導している高校生と中学生の兄妹サッカー選手には、実験と言っては失礼ですが、私が導いて行ける最高のレベルを目指したトレーニングを行なっているつもりです。

既にプロの選手やそれに近いレベルの選手ではもちろんありませんが、そこを明確な目標としている選手という前提の元に指導を続けています。

まだまだ、「動きづくりのためのトレーニング」の基本的なこと部分を繰り返しているレベルですが、それにプラスして行なっている「走るという行為」の指導では、既に大きな変化を感じています。

ピッチの中で最もしてはいけないと思うのが「居付く」という感覚です、次の動作に対応できないからです。

そこで考えたのが、股関節を縦に使うという「アイドリング」という体の使い方です。

これは私が考える走るという行為の基本をなしているものですが、実際にやってみると股関節は縦に使う方が自然なことに誰もが納得してくれます。

次はそこからどうやって動き出すかという問題です。

地面に居付いて、地面を強く蹴って反力を得ることでしか動き出せないと思いこんでいる人にとっては、理解しにくい感覚かもしれませんが、固定概念を離れ実際に自分の体を動かしてみると、なんだそんな簡単なことかと分かり、これまで当たり前だと思ってきたことがバカバカしいとさえ思うようにさえなります。

ではどうやって移動するかということですが、人間が移動するときに使えるエネルギーは3つ、目標方向への重心の移動、重心の落下、上半身と下半身の捻転だと考えています。

その3つを無理なく効率的に使うことが、筋肉の負担が少なく、当然疲労も少なく、なおかつ素速くどの方向へでも動き出せるという理想的な動きになると思います。

そういう動きを身に付けてもらうために行うドリルですが、これまでは「アイドリング」から、引きづりのドリル改め「股関節を引っ張り出しのドリル」を、左右同じ感覚で行えるようになるまで染み付けていきます。

左右別々に行えるようになれば、次は交互に行います。

ここまでくるとかなりこれまでとは違った感覚で移動(既に走りになっていますが)できるようになっています。

ところがここでスピードを上げようとすると、股関節の引っ張り出しという感覚が薄れ、速く足を出したいと、股関節の屈曲動作が顔を出してきます。

股関節はあくまでも伸展を優先させることで、膝は前に上げる意識はなくなり、実際にそれほど高い上がりませんが、逆に踵が高く上がって見えます。

この現象はいわゆる足が流れている状態ではなく、着地する側の足がきちんと股関節の真下に着している証拠でもあります。

その結果として逆の足の股関節はしっかり伸展することができ、スムーズな足の運びでピッチを速めストライドを伸ばしてくれます。

智志は半年でここまでの動きをほぼマスターしています。

次に問題となるのが、動き出し、スタートの速さということになります。

これこそ、私のいう移動のエネルギーの三要素をフル活用しなければなりません、スタートの一瞬だけですが通常の走りの時のような、右と右左と左という同速の動きではなく、左脚を踏み出す時には右の肩を振り出すという対角線の動きを使います。

ところが振り出された右肩を、強く引き上げることを意識すると、次の瞬間から同側の動きに変わってしまうのです。

言葉で説明することは難しく、おそらく読んで頂いてこの動きが正確にイメージできる人はいないかもしれませんが、実際に行うとそうなるのです。

この動きがマスターできると、本当に動き出しが速くなり、あっという間にトップスピードに達することができます。

兄妹は今それに取り組んでいますが、中学生の妹の方が私のイメージに近い動きを行えるようになってきました。

次のステップは、素早くトップスピードに乗って移動した体を、相手の前でどうやってコントロールするかという問題です。

けっして、「止まるストップする」という感覚ではありません。

素速いダッシュで相手の目の前に到達した瞬間に、細かいアイドリングを繰り返すことで、相手のどんな動きにも対応できる準備をするという動作なのです。

この動きには、「アイドリング・ステイ」という言葉を考えました。
「ストップ」ではなく「ステイ」です。

さて、私が指導しているような体の使い方をピッチの上で表現してくれる選手はいるでしょうか。
今夜の日本代表チームの選手たちの動きが楽しみです。

もちろん対戦相手のイラクの選手たちの動きにも興味があります。
まったく知らない選手たちですから、先入観ゼロで見ることができますから。

皆さんも、私のような視点を持って選手の動きを見ていただくと、新しい発見があるかもしれません。

何はともあれ「ガンバレ日本!」です。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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