裏の筋肉

広島市内、久しぶりの雨が降っています。
昨日であれば、松山に向かう高速船に乗るのに、多少の影響があったかもしれませんし、みんなが楽しみにしていた花火大会も中止になってしまったかもしれません。

晴天が続き、水不足に悩まされている地域があったり、大雨で被害が出ている地域があったり、我々人間の文明がどんなに進んでも、自然の力にはかないません。

さて、一般人の方でも継続することで習得できる、といっても持って生まれた能力を使えるようにするだけなのですが、それでも若いスポーツ選手以上にしなやかな動きに見える秘訣はどこにあるのでしょう。

人間の筋肉には屈筋と伸筋があると言いました、見た目にも機能的にも目立つのは屈筋の方です、言葉のイメージは悪いですが、敬意を込めて「裏の筋肉」と呼んでいます。

胸の筋肉お腹の筋肉、腕を曲げる力こぶ、体力自慢力自慢を誇示するときの決めポーズは、そうした屈筋たちを収縮させ、見る人に誇示し圧倒させるのが常です。

ところが日常の動作において、圧倒的に活躍してくれているのは間違いなく伸筋の方です。

ただまっすぐ立っている時、歩いている時、自転車をこいでいる時、こうしてパソコンのキーボードをたたいている時、ほとんどの状況で、明らかに屈筋よりも伸筋が仕事をしてくれています。

スポーツの動作でも、走る・跳ぶ・投げるという基本的な動作から、相撲や柔道などの組み合う動作においても、実は引き付けると表現され、いかにも屈筋が仕事をしているように見えても、実は伸筋が主役の場合が多いのです。

例えば相撲で回しを引き付けると言いますが、単純にその言葉どおり力こぶの二頭筋を主役にして、まわしを引き付けると自分の体の重心が浮いてしまうことが分かります。

引くというよりも、上腕三頭筋で肘を絞るような感覚で、相手のまわしをがっちり押さえこむ、という表現が正しいのではないでしょうか。

競技綱引きを見たことがあるでしょうか、子供の運動会で行われるような綱引きでは、まさに屈筋を使って腕を曲げることで綱を引き合っていますから、効率が悪いことこの上ない運動になっています。

まあお互いがそう思ってやっていますから、私がむきになってこうやった方が勝ちますよという必要もないのですが。

競技綱引きは、全身の関節の伸ばし比べをしているようなものです。

膝・腰・背骨・背中・腕と関節という関節を伸ばすことで、相手の力と対抗しています。

唯一曲げているのは綱を握るための指の関節です。

私は本格的に綱を引いたことがありませんので、軽々には言えませんが、肘を伸ばすことと指を握ることのバランスは、やった人にしか分からない微妙なバランスだと思います。

そうやって私は、人間の行うどんな動きにも、私自身のフィルターを通して見ることが当たり前になっています。

目の前に繰り広げられている現象は、同じ目線から見て写真やビデオに撮れば、後で見直しても全員が同じものを見たはずですし、見えたはずです。

ところがそうやって同じ物を見ているつもりでも、私の網膜を通して脳が認識している情報はまったく違うものである場合が多いのです。

みんな私と同じ景色が見えている時、同じように見え、同じことを感じている。

それがそうではなかったことに、今年の前半初めて気付きました。

少し遅すぎました、それが周りと自分がかみ合わない最も大きな根本的な問題だったのですから。

さて、どうやったら伸筋が自然にしなやかな動きを行ってくれるのでしょうか。

それはどこかを動かそうという発想を捨てることです。

どこかを動かそうと思った瞬間、実はほかの何か所も、というより全身が一つになって動きだすという感覚が分かれば、どこかだけをムキになって頑張らせること、一言で言ってしまえば「力む」ということが必要なくなるのです。

力んでいることイコール頑張っている、頑張っているように見えることが一生懸命やっていると、自他ともに思い込んでいるのです。

シーテッドローイングというマシンを使ったトレーニング種目をイメージしてみてください。

ケーブルにつながったハンドルを握り、両足をストッパーに乗せて膝を少しだけ曲げた状態で踏ん張り、上半身は前傾した状態から、体を起こしハンドルを引き付けて背中の筋肉を鍛えましょうというコンセプトのマシンです。

凄い体をした方が、100㎏を超える重量を引っ張る姿は迫力満点です。
それぐらいの筋力がある方でも、80㎏くらいの重量を扱う時でも見た目は同じような体の使い方をします。

ところが私が指導した方の動きはまったくイメージが違います

まず前傾した姿勢から、太腿の前側の筋肉を意識して膝の角度が変わらないようにします。
そのまま腕にはほとんど力を入れずにハンドルバーが握り続けられる力だけにしておきます、この時さらに力が要らないようにグリップバンドなどを使ってもらうこともあります。

膝が意識できたら骨盤を立てていきます、骨盤の一番下の坐骨だけが座面に着いている感じになるくらいしっかり骨盤を立てていきます。

そうすると自然に骨盤から腰椎の一番下の部分が起き上がるように反っていき、背骨全体が大きく前後のS字カーブを描いていきます。

背骨がそういう風に動くことで、腰から背中の大きな筋肉が、骨の動きをより反らしやすく協力してくれ、背骨が反ったことで左右の肩甲骨が内下方に寄ってきます。

これはそういう風にやろうと思わなくても、体の構造で自然にそうなっていきます。

すると引き寄せられた肩甲骨の動きに呼応して、すでに両肘は胴体の横まで引き付けられています。

ハンドルを握った手で、重量を引っ張ってやるぞと力まなくても、骨の動き関節の動きを丁寧に連動させていけば、勝手に重量に対して必要な筋力は発揮されていたのです。

最後に動いてきた体全体の意識を一気に高めれば、完全なフィニッシュポーズとなり、まさに全身の連動を実感できます

そんな簡単なことでと思われるでしょうが、これで私が言い続けている持って生まれた能力は十二分に発揮できる体に変わっていくのです。

その連動ができないような、必要以上の重量を扱えば、動きの中から自然さが失われます

それで筋肥大が起こるのかという質問も受け続けていますが、その方の求める動きに必要な筋量は間違いなく獲得できます。

一般の方が週に一度の頻度でトレーニングを続けていただき、早い方で一年もすれば上着のサイズが合わなくなったと不思議な顔をされます。

週に二度も三度も苦しいトレーニングを続けていても、ほとんど効果を感じられなかったのに、たったの一度それも1時間弱のトレーニングで、どうしてこんなに変わったんだろう、驚かれるのは当然です。

これが体に対して正しいアプローチをした結果なのです。

次回は別の種目で、もう一度「連動の手順」を説明します。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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