健康のために運動をしなさいって何をすればいいのでしょうか。

日々さまざまな人と接していく中で、人間の体はどういう風に作られているのか、またどういう風に使って行くことが、それぞれに与えられた能力を十分に発揮し続けることができるのかを考え続けてきました。

体の痛みを訴え、それを少しでも和らげたいと施術を受けに来ていただく方、アスリートとしてトレーニングを重ね、立派な体を作り上げてきたにもかかわらず、一番の目的である競技動作の向上がみられないと悩み、私の元を訪れてくる競技スポーツ選手、また育成年代で、これから将来に向かって大きな夢を持ち、早い時点で私の理論に沿った動きづくりのトレーニングを指導して欲しいとやってくる子供たち、まさに老若男女、様々な方に心を寄せてきました。

そうした日々の中で、人間の本質は骨盤と背骨を中心とした6方向に動くことができる能力をもって、2本足で立って生活する動物であるという結論めいた考えに至っています。

地球上で重力に抗し、二本足で立ち続けるという行為は、我々が想像する以上に大変なことだと思います。

立っている時ばかりではありません、座っている時にも上半身を起こしておくということではまったく同じことが必要になります。

そういう生活を何年何十年と続けて行くことで、体を真っ直ぐに支えておくために必要な筋肉は疲弊し、その姿勢を維持するために体を支える筋肉は、型にはまったような状態になってしまいます。

ベッドの上で仰向けになってもらうと、当然体を支える筋力は必要ないにもかかわらず、立っている時の緊張は消えることなく、踵とお尻と肩甲骨、そして後頭部の4点だけがベッドに接していて、あとの部分は緊張したまま、まったくベッドに付いているという感覚がないことに気付きます。

そんなことは普段考えてもいないと思いますので、私に指摘されても、そう言われればそんな気がするという方もいれば、まったく感覚できないという人もいます。

そんな体の緊張状態が続いたまま、いくら体にいいと言われている高額な寝具に横たわったとしても、本当の意味で体をゆったりと休ませるという状態には成り得ないのです。

そんなことをお話しすると、寝入りばな何となく体の姿勢が落ち着かなくて、仰向けになったり横向きになったりを繰り返しているという方がほとんどです。

なぜそういう状態になってしまうのか、「重力に抗して2本足で立って生活していくのだから、仕方がないといったじゃないか」、もちろんそうです。

しかし、本当に真っ直ぐ立っていることだけが我々人間に与えられた能力だったのでしょうか。

四足動物でも、時々二本足で立つことがありますが長続きはしません、骨格の構造がそう出来ていないからです。

我々は二足歩行で真っ直ぐに立っていることができますが、真っ直ぐだけではなく色々な方向に体を動かすことができます。

それがずっと言い続けている、「人間の体は骨盤と背骨を中心として関節を6方向に動かせ、それらを連動させて使うことができる」、ということなのです。

重力に抗しバランスを保っているということは、ただたんに体幹の安定とか筋力の向上の結果ではなく、様々な方向に揺らぎながら、出来るだけ少ない筋力発揮で骨格を維持しているということなのです。

そのために必要なのが、骨盤と背骨を中心とした6方向への動きを、それぞれの持って生まれた能力、簡単な言葉で言えば可動域ということになりますが、できるだけそれらを長い年月保っておけるかということになると思います。

ある一定の年齢に達すると、「運動不足で何か運動を始めたいのですが、どんなことをやったらいいでしょうか」という質問を受けることが多くなります。

「慢性の腰痛やその他体の不調があり、運動らしき運動はここ何年何十年も行ってきませんでしたが、おかげさまで楽になったので、元気で長生きするために運動を始めた方が良いですよね」、と言われることもあります。

その時私がお答えするのが今日のテーマです。

手軽に行える運動と言えば、ウォーキングやジョギング、ラジオ体操などがあると思います。

また体の負担が少ないからとプールに通ったり、ヨガや太極拳といった、いかにも体によさそうなイメージのものもあると思います。

私はそれらを行うことが悪いなどというつもりはまったくありません。

しかし、現実としてそれらが原因で体のどこかを痛める人が多いことも事実です。

体のために健康のためにと思って取り組んだことで、健康を損なってしまったら本末転倒です。

では健康な体とはいったいどんな体なのでしょうか。

もちろん病気やけがもありますから、すべてをひとくくりに語ることは出来ません。

しかし、体にとって良い運動はと聞かれたら、私の答えはひとつです、今日何度も登場しているキーワード「骨盤と背骨を中心として6方向に動かす体操をしましょう」と。

元々持って生まれた能力であるにもかかわらず、年を重ねるにつれ使わなくなっていく関節運動の方向性と可動域、関節の角度が変わるということがイコール人間が動くということですから、骨を動かすために必要な筋肉の収縮も少なくなってしまうということです。

ウォーキングをしようと、競技スポーツ選手のように激しい運動をしようと、その他名前を出した様々な運動をしようと、この持って生まれた6方向の関節の運動という意味では、まったく足りていないのです。

昨年の9月、私の著した本を読んでくださった、岐阜県にお住いのご夫婦から電話がありました。

60代の奥さんがパーキンソン病を患い、ここ数年で症状が悪化し、背骨が丸くなってしまい体の自由が利かなくなり、歩行や日常動作にも支障をきたす状態になっているとのことでした。

実は私の長女が音大に通っている時、若年性パーキンソン病の診断を受け、音楽の道を諦めざるを得なくなったということを経験していました。

当然パーキンソン病に付いての知識は一般の方以上にあって、もちろん治るとか治らないとかいうレベルの問題ではないことは承知の上で、ご相談いただいた際にも、「私の技術が今のお体の状態にどれだけお役にたてるのか、まったく想像もつきません」とお答えしたのですが、とにかく一度施術を受けに行きたいと言っていただきました。

お体のこともあり、途中自由に休憩が取れるということで、ご主人の運転する車で7時間近くかけて広島まで来てくださいました。

遠くから来ていただいたので少しでも長く時間をかけたいと、2時間の予定で施術を始めましたが、途中トイレに行きたいと言われ、ご主人と二人で手を貸してベッドから降りていただき、すぐ目の前にあるトイレにお連れしようとした時、何とベッドから降りた奥さんが杖を突くこともなく自力で歩いてトイレに行かれ、帰りもご自分でも不思議そうな顔をされながら、やはり自力で歩いてこられたのです。

私も驚きましたが、お二人はもっと驚いていました。

そんなことがあって、私の施術が少しでも体を楽にしてくれると思っていただいたようで、冬の時期は雪が降ると危ないので我慢していただきましたが、先日4回目の施術を受けに来ていただきました。

この間も、私が指導した体を6方向に動かすという体操を、毎朝40分以上もかけて熱心に行ってくださっていたそうで、丸まってしまった背中は真っ直ぐにはなりませんが、ベッドの上で行う施術の中で行う6方向の動きは、初めてきた頂いたときとは比べ物にならないほど上手に、そして自由に動けるようになっていました。

人間本来の体の動きを取り戻すことでどんな変化があるのか、それまでなかった食欲が増し、間食までされるようになり、食べることが楽しくなったそうです。

以前から奥さんの様子を知る方々からも、元気そうになったと言われ喜んでおられました。

寝たまま体操はこういう方にはもってこいで、まだまだ元気な我々には物足りないと思うかもしれません。

では、ウォーキングやジョギングに求める心肺持久力が、本当に我々の日常生活に必要な絶対条件なのでしょうか。

エアロビクスに代表されるような激しい運動によって得られる、筋持久力や心肺持久力は本当に必要なのでしょうか。

体に苦しい思いをさせることが、本当に体のためになっているのでしょうか。

6方向の体操をゆったりと行ってもらう時、体が温かくなっていくような気がするとか、体の背面の4点支持だった緊張が取れ、体全体がゆったりと横たわっているような気がしてきたという感想も聞かれます。

筋肉の緊張がほぐれ、血管や神経の圧迫が取れることで血流が改善し、その結果さらに筋肉がリラックスしていくという好循環が起こります。

日常生活を円滑に行うために必要な体はこれで十分整えられるのではないでしょうか。

そんな楽なことではダメだ、もっと頑張ってもっと体をいじめて、そう思う人はそうやれればいい、ただそれと引き換えに負わなければならないリスクはしっかり自覚してください。

何事も加減です、好い加減を見つけなければなりません。

スポーツを行う時、最初は楽しみのつもりでも、義務感が出てきたり勝ち負けを競うようになったり、時計を気にするようになると、健康のためという当初の目的からどんどん離れて行きます。

人間という動物に生まれ、その体に仕組まれた体の使い方を上手に使いこなすということの意味をよく考えたうえで、あとはそれぞれの考えで好きなことをやればいいと思います。

ただ私が健康のためにどんな運動を行ったらいいですかと問われれば、今日の記事のようなことになるということです。

長くなったのでもうやめますが、近いうちに、体を痛める選手が続出しているにもかかわらず、何の疑いもなく自分の指導を続けている指導者に対して、一言言わせてもらいたいと思います。

西本塾から1週間、7名の参加者のうち5名の方から感想が届きました。
感想は義務ではないと言って会を締めましたが、二日間全身全霊をかけて行った西本塾、少し残念な気がしています。

スポンサーサイト

Trackback

Comment

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

最新記事

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR