人間という動物が速く移動するために仕組まれた体のからくりとは。

今日は日曜日、大型連休中という方も多いかもしれませんね。

スポーツの現場で仕事をしていた頃には、休日こそ試合を見て頂ける絶好の機会ですので、休みなどという感覚はありませんでしたが、今は呑気なものです。

現在進行形で行っている「遠隔サポート」、今回の対象は10歳のサッカー少年ですが、実際に依頼してきてくれたのもLINEを通じてやり取りをしているのもそのお父さんです。

本来ならば直接本人に対して指導をし、反応を見極めながらサポートを進めて行きたいところですが、これまで直接的な関わりがまったくない小学生に対して、1週間で結果を出す指導が出来るかと言われれば、さすがに難しいと思います。

そういう思いで過去に問い合わせをいただいた方には申し訳なかったですが、お断りをしたこともありました。

しかし、そんなことばかり考えていては、遠隔サポートというシステムを導入した意味がないと思い、今回どれだけのことができるか、私にとっても新たな挑戦が始まりました。

本来ならば、まずは直接指導を受けていただき、そのフォローという形で遠隔サポートが成立すると自分で思い込んでいました。

今回相談を受けた時にも、それが正しい順番だということはお伝えしました。

それでも今回の遠隔サポートを成功させなければ、二度と同じような形でのサポートなどできるはずはないと、どうすれば正しく伝えられるか、まさに試行錯誤が続いています。

サッカー少年の問題点は、まずは膝の痛み、そして素人目にも分かる姿勢の悪さに起因する動きのぎこちなさでした。

最初に送っていただいたプレー動画を見て、これは簡単には改善できないぞと腹をくくりました。

痛みの原因は走る時の体の使い方が間違っていること、ということは一目で分かりました、当然スピードもなく、対応力もありません。

すべての問題の根本原因は「走るという行為の体の使い方」にあると確信しました。

西本塾の二日間をかけて、体の仕組みから始まり、なぜ私がこういう考え方に至ったのか、私が理想とする体の使い方を実現させるためには、どんなトレーニングが必要で、どんなドリルを行えばいいのか、目の前の受講者の皆さんに必死に訴えかけても、一度の受講で私が満足する動きを身に付けてくれる人はほぼ皆無と言ってもいいくらいです。

それを動画のやり取りと文字のやり取りがメインの遠隔サポートで本当に指導できるのか、現実的には難しいと言わざるを得ませんでした。

それが今、私の想像をはるかに超えるスピードで、理論と実際の動きを習得しつつあることに驚いています。

まずは動画を見て、私の理想とする体の使い方、一般的に正しいと言われている体の使い方、そして本人の現状の体の使い方を、簡単なハリガネ君のイラストと文字で説明するところから始まりました。

実はここで提示した理想の体の使い方の写真に、私の考え方のすべてが含まれています。

しかし、最初にそれを見た時には、この1枚の写真に含まれることに、そんな大きな意味があるとは思わなかったでしょう。

その意味を理解し、実際に体がそういう風に動けるようにするために、それ以降のやり取りを毎日行っているのです。

細かい説明はここではできませんが、骨格模型を使って股関節の動きを説明する動画を作ったり、これまで撮りだめてきた各種ドリルの動画を使って、確実に理解が進むよう工夫しています。

そして今日現在いよいよ下半身のドリルを行っていただいています。

私の理想とする体の使い方は、一言で言えば、「着地する足も、後方(蹴り足とは言いません)の足も、どちらも股関節は常に伸展状態を保つ」ということがすべてなのです。

一般の常識で考えれば、着地足は前方に大きく振りだすために、股関節を力強く屈曲させ、膝を高く引き上げることが要求されています、そのために鍛えなければならないのが腸腰筋だとかいう発想になって行くわけです。

最近では、「着地は股関節の真下に」という言葉を使う指導者も見受けられますが、現実として股関節の屈曲で引き上げられた足は、重心である股関節よりも前で着地せざるを得なくなり、着地した瞬間と言うより、地面を蹴った瞬間から、前方に振り出すための股関節の屈曲が始まっています。

それは前方に進んで行く体にとってブレーキとなってしまうことになり、後方の足は当然大きな力で地面を蹴る必要が出てきます。

昨日も地元広島で織田記念陸上競技大会が行われていましたが、この日のためにというか、大会に合わせて日々トレーニングを積んでいるトップ選手の中にも、本番のレース中やサブグラウンドでのアップ中に、筋肉のトラブルで棄権を余儀なくされてしまう選手が何人もいました。

この現実が、私の走るという行為への疑問の起点となり、様々な観点から試行錯誤を続けてきた結果が今指導している体の使い方になっていきました。

私がお手本としているマイケルジョンソン選手の股関節の伸展具合は、他の選手と比べると異常なほどです。

地球上で最も早く走ることができるチータの着地の瞬間を見ると、前足も後ろ足も付け根の部分が通り過ぎた瞬間に地面に触れます。

付け根より前に着地すれば、当然体の重さを受け止めることになりますから、スピードを制御するブレーキがかかります。

チータの表情に力みは感じられません、チータでも吠えるというか相手を威嚇するときには怖い顔をするのでしょうから、力みのない表情と言い方も間違ってはいないと思います。

4足歩行の動物の走りは、まさに背骨をうねらせて体を伸ばしたり縮めたりしているだけで、地面を強く蹴っているという風には見えないのです。

彼らに肉離れなどという概念は見出せませんし、実際に、自然界の食物連鎖の中で、追う方も追われる方も走っている最中に肉離れを起こしたことが原因で、獲物を逃がしたり捕まって食べられてしまったのではシャレにもなりませんから。

以前ある選手にこういう説明をしている時に、「チータの走りが理想的だと言うのなら、なぜ持久力は備わっていないのですか」という質問を受けました。

私の答えはこうです、「地球上のありとあらゆるものを創った創造主が、そんな万能な力を一つの動物に与えてしまうと思うかい、そんなことをしたら地球上がチータでいっぱいになってしまうと思わないか」と言うことです。

まさかチータだらけにはならないまでも、絶対的な瞬発力とスピードを与えられたうえに、持久力まで備わっていたとしたら、狙われた獲物は100%捕まえられ命を奪われてしまいます。

それぞれに与えられた能力があり、どんな動物にもかなわない天敵がいて、さらには自然界の力も働いて、地球上の生命のバランスが保たれているということなのだと思います。

人はそのすべてを手に入れようとしています。

それはあまりにも思い上がった考え方で、その前に我々に与えられた能力、体の仕組みやからくりをきちんと知ったうえで、それを効率的に使うという発想こそが本来の姿ではないのでしょうか。

そこには体をいじめるトレーニングとか、結果を出すことと故障することは紙一重で、努力が足りないとか運が悪かったですまされる問題ではないはずです。

今日もおそらくは親子で「アイドリングからの動きだし」、片足着地の際の両足股関節の伸展動作による「後ろ足の引っ張り出しのドリル」、それを交互に着地して行う「連続引っ張り出しのドリル」そして、そのまま回転数を上げて行くことで自然にスピードが上がるという体験を行ってくれていると思います。

ここまで来ると、もう地面を蹴らなければ前に進めないという固定概念の呪縛は解かれていると思います。

「なぜこんなに簡単に前に進むのだろう、なぜ足の負担が少ないのだろう、今までの走り方ってなんだったんだろう」、そんな気持ちが芽生えだす頃かもしれません。

もしかしたら直接指導の西本塾生よりも、深い理解で進んでいるのかもしれません。

こうして遠隔サポートという形で私の理想としている走るという行為を指導するにあたって、改めて自分の中で積み上げてきたことを整理していますが、一般的に行われている走り方と、私の理想の走りとの決定的な相違点は、腕を振るとか振らないとか、地面を蹴るとか蹴らないとかではありません、「足を前に運ぶために股関節を屈曲させるということをしない」、「ふくらはぎの筋肉を強く収縮させて地面を蹴り、膝を屈曲させて踵を巻き上げない」、「とにかく関節の運動にとって大きな負担となる屈曲という動作を行わせない」と言うことに尽きるのだという結論になりました。

お父さんはサッカーの審判もされているそうですが、笛を持っていようが副審として旗を持って走ろうが、他の競技で用具を持って走ろうが、この股関節の伸展動作の連続で走るという感覚が身に付けられれば、人間として最も効率的な走るという行為を行うことができるということです。

このお父さんは只者ではありません、FBTの動画を送っていただいたときにピンときました。

中国武術の経験があるそうで、体をどう使うかという観点は十分に持っている方でした。

サポートも残り数日、お父さんの理解力と身体能力があれば、今回の遠隔サポートはお互いに有益な1週間になるはずです。

息子さんの指導は、もちろんお父さんが継続してくれるはずです。

お母さんも含め家族みんなで協力し、何とか息子さんのためにと努力されている様子が伝わってきます。

最後の部分までしっかり伝えて行きます。

人は、自分の体験と学んできた知識の範囲でしかものを言えませんが、そういう固定概念の中からは新しい何かは生まれてはきません。

私の考えも面白がって取り組んでみてください。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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