かわし動作

「かわし動作」私が提唱しているトレーニングの方法や、何々筋を使ってではない連動したしなやかな動作を、現実のスポーツ動作を指導する際に使うのが、この「かわし動作」ということばです。

この概念を理解し、また実践することができれるようになれば、「西本理論免許皆伝」、私の考え方を広めてくれる後継者どころか、私以上のことができる可能性も大きいのではないでしょうか。

それぐらいこの概念は重要で、私の指導するトレーニング理論の最も重要な部分となります。

これまで説明してきたように、体には数えきれない数の関節が存在し、それぞれに基本的に8方向の運動方向が備わっています。

8×8×8×8・・・・・まさに天文学的な動きの組み合わせが可能なことが、我々人間が他の動物よりも複雑な動きができる理由です。

しかし二足歩行になったために、力を発揮するために「てこの原理」が必要となり、「支点」を作るようになってしまいました。

無理な態勢で大きな力を得ようとすると、支点になる部分に大きな力が加わり、それが体を痛める原因となるのです。

基本的には筋力を発揮するためには、地面に立つ足の裏が、接地している地面を押すことの反力が力の源になります。

それを全身に伝えていく中で、走る・投げる・蹴るなどの目的となる動作を行おうとします。

体操競技で16歳の天才高校生、白井健三君がが話題になっていますが、床運動や跳馬で見せる、信じられないような高さと回転さらに捻り動作も、最終的にはしっかりと床を蹴るとか手をつくといった、地面と離れる瞬間のバランスと力強さがなければ、空中に放り出された猫のように、体勢を立て直して回転運動とはいかないと思います。

いや彼の能力を見ていると、それでもできるのではないかと思わされてしまいますが。

高飛び込みでも同じですし、走り幅跳びや高跳びでも踏切の瞬間が一番大切となります。

野球の投手の動作を見ていると、大リーグの選手などは、まるでそんな理屈を無視したかのように、肩や肘に大きな負荷がかかっているんだろうなという投げ方をします。
いわゆるアーム式と呼ばれる投げ方です。

あれほどの筋力を持つ体の大きな投手たちが、練習でも投球制限があったり、試合でも100球で交代とか、そのかわり中四日で先発などという、日本では考えられない起用方法をします。

私の推測ですが、それはアメリカ野球の長い歴史の中で、どれだけ筋力を鍛えてもああいう投げ方をしている限り、一定の制限を設けないと故障が起きてしまうことを知っているからだと思います。

体全体、特に腕がしなやかに振られて、という風に見える投手はほとんどいません。
大きな体と筋力で、ドスンという感じで投げ込んでいきます。

日本人にはそういう投げ方は見られません。
日本人の筋力で、あの投げ方をしても同じ球威のボールは投げられないでしょう。

ダルビッシュ投手にしても黒田投手にしても、素晴らしいしなりで腕が振られています、外国人のような迫力は感じませんが、実際のボールはまったく引けを取らないどころか、勝っている部分もたくさんあります

軸足でプレートに立ち、その足の裏からボールをリリースする指先まで、無駄なくエネルギーが伝わっていくのが分かります。

ここでイチロー選手をもう一度取り上げます。

彼の外野からの返球は、レーザービームと呼ばれ相手チームにとっては大きな脅威となっています。

あの瞬間の、彼の体の身のこなしを思い出してみてください。

ライトにゴロが飛んできたとして、一塁ランナーの三塁への進塁を阻止するあのレーザービームです。

守備位置からボールを捕球する位置と、送球する方向を計算し、三塁ベースに対してできるだけ正対して捕球動作に入ります。
左手にはめたグラブで捕球した瞬間、投げる方の右手に持ち替え、流れの中で左足を送球方向へしっかり踏み出し、高く上がった右肘が耳をかすめるように真っ直ぐ振りだされ、遅れて肘から先が大きくしなって、まさにレーザービームのように三塁ベースに向かって投じられます。

この後が問題なのです。

彼は踏み出した左足を軸にして、右手でボールを投げたのですが、ここで左足がつっかえ棒のように邪魔をしてしまったら、彼の体はどうなってしまうでしょうか。

関節という関節がぶつかり合って、とんでもない負荷がかかってしまうはずです。

そこで彼が行っていること、ボールを投げた右手と一緒に体全体が左回りに回転し、空中に飛び上がって一回転するように着地しています。

これが彼の体を守ってくれている「かわし動作」です。
どこの関節も可動域いっぱいまで無理をさせれれることがなく、全身が連なりあって協力しています。

意図的にやっているというより、体が自然にそういう風に動くのだと思います。

大リーグのショートの選手が見せる、三遊間を抜けるような打球を、逆シングルで捕球してそのままの態勢で、上体の力だけで一塁へ矢のような送球というシーンを見ますが、日本人のショートではそこまでの強いボールを投げることができません。

その分俊敏に回り込んだり、小さなステップで体勢を立て直したりして、送球しやすくしています。

筋力トレーニングで強くなったからといって、同じことをしようとしても体に無理な負担をかけるだけで得策ではありません。

日本でショートを専門とした選手がアメリカに行くとセカンドで使われるというのも、それくらい現実的に差があるということです。

一つの関節が動くために、隣の関節が動き、遠くの関節が動き、すべての関節が可動域いっぱいに近づかないように協力し合って、体の負担を分配させます。

それでも間に合わない時にはイチロー選手のように、飛び上がって地面との接触を離れることで、体中の関節をそして筋肉をフリーな状態にして体を守る「かわし動作」が完成するのです。

サッカーでも接触プレーで簡単に倒れてしまう選手が見られますが、究極の「かわし動作」が倒れるという行為ですので、ケガを防ぐという意味では転んでしまうことも悪いことではないのですが、相手のファールを誘うような、明らかに姑息な倒れ方は止めた方がいいと思います。

「かわし動作」を習得するためには、一つの関節に与えた負荷を全身に分散していくという、20年前に私が行っていた「オクタントトレーニング」と名づけた、マッサージベッドの上で行うトレーニングは有効だと思います。

トレーニングを行う選手以上に私の方が大変で、どちらがトレーニングをしているのか分からないくらいなので、最近はあまり行っていませんでしたが、今年は久しぶりにこのトレーニングをやらせたい選手に出会えましたので、何回かやってもらいました。
もう少し続けていればと残念でなりません。

この「かわし動作」、故障を防ぐだけではありません。

全身の連動性が意識され、動きが確実に良くなります。

日常生活の中でも、重いものを持ったり階段を上ったりする時に、腕の力でとか足の力でと思わずに、全身が協力して最低限の筋力で動くということを意識すれば、疲れが全く違います、お試しください。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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