膝の故障と、背中を使えていないことの関係 その①

今日のテーマは多くの要素を含んではいますが、これまでの考察を振り返り、また新たな気付きとも合わせ、持論を展開していきます。

私がサッカーの世界に「体の使い方」という概念を持ち込もうとしたのは、人間の能力が90分間フルに走り続けることができない知っていながら、それを追い求め過酷なトレーニングを行うことが当然だと思っている指導者や選手に意識改革を求めたいということが始まりでした。

「フィジカルが弱い、足が止まる」、何年何十年と言い続けれれている課題に対して、これまで誰も疑問を持たず、同じ方向からのアプローチを繰り返していることに、サッカーという競技の経験がない、素人の私だからこそ湧いてきた疑問だったかもしれません。

そのことを真剣に考え始めてから5年以上が経ちました、それからの5年間で当初には思いもつかなかったような色々なことに気付かされました。

私が気づく程度のことに、なぜサッカ-の専門家と言われる人たちは気づかないのだろう、いや気付いてはいても気付かないふりをしているのかもしれない、そんな風に考えることもありました。

今日のテーマは、サッカー選手に限らず育成年代のスポーツ選手の多くが悩む、膝のお皿の下の部分(脛骨粗面)の痛み、いわゆる「オスグッドシュラッター病症候群」と呼ばれるもので、名前の通りアメリカとドイツの医師がほぼ同時に症例を報告してついた名前のようなので、当然我々アジアに暮らす、日本人に特有な症例ではないことは明らかです。

しかし、日本では現実としてたくさんの子供たちがこの症状に悩まされています。

大腿四頭筋の柔軟性と筋力不足が指摘され、それに対処する方法が指導されるわけですが、もっと根本的な原因が他にあるのではと、32歳で開業した当初からずっと考えてきました。

最近の例でいうと、16歳の高校2年生が半月板の縫合手術を受け、その後も痛みが引かず復帰が出来ないということで再度受診すると、今度は半月板の部分切除術を行ったそうです。

どんなに正しい手術が行われたとしても、その後のケアとリハビリのトレーニングが確実に行われないと、時間の経過だけで良くなっていくというのは甘い考えだと思います。

また遠隔サポートをさせてもらった小学生のサッカー選手も、膝の痛みを抱えていました、おそらくはこの症例だと思います。

さらには、遠く南米の地から相談に来てくれた16歳のサッカー少年も、まさにこのオスグッドシュラッター症候群の症状そのものでした。

この3人に限らず、膝の痛みを訴える選手の共通した特徴が、プレー時の姿勢が悪いということです。

以前関わったチームでもそういう特徴というか、裏に抜けて行く動き出しの時、頭を下げて前傾し腰が引けてしまうという癖を持った選手がいました。

当然、スピードを上げて行くためには股関節を強く屈曲させ、膝を高く引き上げる必要が出てきます。

それを行うためには大きく腕を振って、体の前側の屈筋を総動員した体の使い方が必要になります。

そうすると、少し難しい話になりますが、筋肉の最終単位である筋原線維のアクチン繊維とミオシン繊維が滑走し重なり合うことが、筋肉の収縮活動そのものなわけですが、私の3・5・7理論と名付けた模式図をイメージしていただくと、一度3方向へ収縮している状態から、さらにもっと収縮させるというのは不可能なことで、筋肉にとっては出来ないことを無理やりにでもやらせようとしているわけですから、まさにブレーキをかけながらアクセルを踏んでいる状態となります。

さらに、その収縮状態の筋原線維が大きな着地の衝撃に対してどう反応できるか、想像してみてください。

ギュッと収縮してやわらかさの無くなったものに、もう一回頑張って衝撃を受け止めろというのですから、人間はなんと無茶なことを体に要求しているのでしょうか。

ここに私が問題提起し、走るという行為や、その他さまざまな動きの中での体の使い方を工夫し、本来人間として仕組まれた体のからくりに沿った使い方を考えてきたのです。

誰かがこう言っているとか、どこかに書いてあったというレベルの話ではなく、もっと根源的な人間の体とはという部分です。

スポーツではとにかく一生懸命な姿が賛美されます、歯を食いしばり息を切らし、倒れても立ち上がりと、まるでスポ根漫画の世界のような感じでしょうか。

それらの動きは、屈筋といって関節を曲げる時に主に使われる筋肉で、主に体の前面に配置されています、それを使っている時に、本人も充実感があり、見ている周りの人間にも頑張りが伝わってきます。

それこそが力んでいるという状態そのものであることに気付かずです。

頑張るなと言っているわけではありません、正しい頑張り方があるのです。

それを指導者が正しく認識できなければ、永遠に子供たちに対して無駄な頑張りを強要することが続くでしょう。

腰を落とし低い姿勢で相手の動きに対応する、前に走る時には、とにかく体を前に突っ込ませ、着地はできるだけ前、腕をしっかり振って腿を引き上げ、力の限り頑張れ、これが今評価されている体の使い方なのです。

ところがこのことで、大きく前方に着地した足にはどれだけ大きな負担がかかっているか、冷静に考えてみてください。

その結果がオスグッドシュラッター症候群であり、脛骨や尺骨の疲労骨折、足裏の足底筋膜炎、膝関節内の半月板や靭帯の損傷、太腿前後の肉離れ、ざっと挙げただけでもこれだけの疾患名が出てくるほど危険な行為を行っているのです。

それを改善するために必要なことが、骨盤を後上方に引き上げるという機能を持つ、広背筋の機能を向上させるという発想でした。

この発想にたどり着いたのは、日本で活躍したサッカー選手が海外に渡ると今一つ活躍できないという現実を知り、数年前から何人かの選手の動きの変化をチェックしたことでした。

海外の選手と日本の選手では、背中を使い方に明らかな違いがあると感じたのでした。

日本の選手と海外の選手のどこがどう違って見えたのか、これから日本サッカ-が世界と伍して戦ううえで、知っておかなければならない大事なキーワードだと思っています。

南米でプレーしている16歳の選手から、彼の地の医療スタッフにはオスグッドと言う概念がないことを聞かされ、なるほどそういうことかと膝を打ちました。

実際に来てくれた時にも話を聞きましたが、プレー中の姿勢が自分とは全然違うとのことでした。

痛みの原因の3要素、「間違った体の使い方をしている」の前に、「正しく使いたくても体がそういう風に動いてくれない」、という現実があるようです。

体づくりでは届かない動きづくりの世界、私はこれまで以上に声をあげ続ける必要がありそうです。

日本の選手と海外の選手との違い、広背筋の機能と膝のケガとの関係、長くなりそうなので次回に続きます。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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