学び合う楽しさを感じながら。

私もそれなりの年齢になってきました。
もしずっと会社勤めをしていたとしたら、そろそろ定年後の生活を考えなければならない状況を迎えていたことでしょう。
幸いなことに私の仕事には定年というものはありませんし、施術と動きづくりのトレーニング指導という両輪ともに、まだまだ続けていくことができそうです。

どんな仕事でもマスターしなければならないスキルがあって、それをベースにして応用発展させていくことが個人としての成長だと思います。
今私が行っていることにスキルという概念を当てはめるとしたら、いくつかそれに当てはまるものはあると思います。
ではそれを形の上でマスターすれば、同じような結果を出すことができるかというと、なかなかそうはいかないことがこの仕事の難しいところです。

何を持って結果を出せたと言えるのかも、正直これと言った定義さえ見つけることができません。
いまの世の中では当然のこととなっている、数値化する可視化するという客観的な評価を受けることが最も難しい分野かもしれません。
それではダメだとすべてをデータ化し、情報を共有することでケガの予防や能力向上に貢献しようという試みは、以前から行われてきました。
私はそれを否定する気はありませんが、私がやりがいを感じているのは、目の前にいる人間の体と心の変化を、まさに手に取るように分かるという、なんとも曖昧な表現しかできない部分です。

様々な人間を相手にしています。
私の仕事の片輪である施術行為ですが、一般的な概念では、施術行為を行う施設を訪れる人たちは、ほぼ例外なく受け身な立場です。
受け身というのは、それぞれの施術者が行う行為に依存し、その技術で自分の不調を改善してもらおうという意味です。
そんなことは当然で、それ以外何を目的にそんな所に行くのかと言われることでしょう。
もし自分の抱える痛みや体の不調が、その行為によって改善したとしたらそれはそれで素晴らしいことかもしれませんが、本当の意味でその人の体は改善できたと言えるのでしょうか。

人間は産まれてから男性は18歳、女性は16歳で個人差はありますが人間という動物として成熟します。
地球上に存在するすべての生き物は、種を保存して行くために成長し終焉を迎えます。
人間だけがそうでない営みを行うようになってしまいました。

そんな一生の中で、自分の体はどういう風にできていて、どういう風に使うことが自分に与えられた能力を十分に発揮できるのか、などということを考えて生きている人はほとんどいないと思います。

私は何故か、そしていつからかは分かりませんが、そんなことばかり考える人間になっていました。

体の痛みや不調を訴える人に対して、そんな理屈など関係なく、施術を終えた時に「楽になりました、ありがとう」と言ってもらえれば十分お役に立てたと思える仕事なのに、「あなたはどうしてこういう状態になってしまったのか、どういう風に自分の体と向き合っていればこんなことにならなかったのか」、「人間の体はね・・・」と、聞きたくもない話かもしれませんが、このことを知らないままにこれからの人生を続けて行くことは得策ではないと、聞かれてもいない話を始めてしまうのです。

せっかく縁あって私の元を訪れてくれた人には、身に付けた技術を発揮して体の状態を改善してあげるだけではなく、自分の体を見つめ直し、自分の体と対話するための「文法」のようなことを伝えてあげなければ、ここに来てもらった意味は半減すると勝手に思っています。

「治してもらう」ではなく、自分の体は自分で責任を持って使い、責任を持って手入れして欲しいと思っています。

入り口を入ってその方法を、一緒に身に付けて行きましょう、というのが私のスタンスです。

同じようにスポーツ選手の能力向上を目的としたトレーニングも同じです。
有名な選手が取り入れているから、今流行っていてみんながやっているから、そんな動機で特定のトレーニングを取り入れる人が多いと思います。

よく例に出す話ですが、子供の頃駄菓子屋さんで、色や大きさの違う糸のついた飴玉があって、その糸が束ねられた中から一本を選んで引いて、引っ張られた飴玉をもらえるというのがありました。
たぶん5円で1回引けたと思いますが、同じ5円なら大きな飴玉をもらえた方が嬉しいに決まっています。
飴玉の方をちょっと引っ張って、目当ての飴玉につながっている糸を見つけてやろうと、子供ながらに工夫しましたが、私はそういうところは生真面目で、間違ってもお店のおばちゃんの目を盗んで、はっきりと分かるように飴玉を引っ張るなどということはしませんでした。

今の世の中ではインターネットを使って、自分の知らない分野のことでもそれなりの知識を得ることができるようになりました。
逆に言えば上っ面の言葉だけで、分かったような気になっている人が多いのではないでしょうか。

途中の考え方どころか、基礎となる一番大事なところさえ知ろうとせず、すぐに結果を求める、そんな人が多くなって来たようにも思います。

スポーツ選手にとって「結果を出す」という表現はとても難しいことです。
個人の対人競技であっても、勝ち負けはその時その瞬間の相対的な力関係の評価であって、その選手の能力の「絶対評価」ではありません。
私はこの絶対評価という言葉にこだわりますが、絶対評価にはこれが最上でこれ以上はないという言い方はあり得ません。
自分がこれで良いと満足してしまった時点で成長は終わりだということです。

そこで重要となってくるのが成長を加速させて行くための方法論と言うことになります。
その一つの考え方が私の提唱している「動きづくり」と言う概念です。

大雑把な言い方ですが、最終的な能力の向上を選手自身と私が、共に納得できるレベルに達するためには、様々な段階を経て積み上げていかなければなりません。
「動きづくり」という言葉は、ある意味ゴールに近いもので、この部分だけを知りたい、教えて欲しいと言う目的が見え見えの依頼を受けたことも、一度や二度ではありません。

どんなレベルの選手であっても、一番基礎の部分から時間をかけて頭と体に染み込ませていけば、絶対に能力を向上させられます。
それには多少の時間がかかります、チームの専属ではありませんから、そう言う意味で私が満足できる指導はできません。

しかし、私のような何の肩書きもなく無名な人間の考え方に共感し、指導を受けてみようと広島まで足を運んで来てくれる選手たちは心構えが違います。
現状より一歩でも半歩でも成長したい、そんな熱い気持ちを持っている選手には、私はそれ以上の熱を持って指導しています。

口先だけの選手はすぐに分かります、飴玉の大きさに気を取られて、結局は最後の部分だけしか覚えて帰ろうとしませんから。
当然成長も望めません、例えば走ると言う行為なら、畳一枚のスペースがあればできるドリルに費やす時間が7割で、実際に外で走る時間は3割で良いと言っています。
ドリルが完全に身につかなければ、走ると言う行為の体の使い方を変えることはできないからです。

先日指導を受けに来てくれたドイツのシュツットガルトでプレーしている浅野拓磨選手は日本代表には呼ばれ続けているものの、定位置を確保するところまでは至っていません。
選手としてはもちろん満足できるはずもなく、彼の大きな武器であるスピードを活かすためにはどんな体の使い方をしたら良いのか、サンフレッチェ広島在籍時から、私の指導を受けたことのあるチームメートが行なっている、見たこともないトレーニングの仕方に興味を持ち、私の存在もとても気になっていたそうです。

代表選手として行動していると、他の選手がどんな人からどんな指導を受けているという類の話がたくさん聞こえてくるそうです。
目の前で体幹トレーニングやヨガを取り入れたトレーニングを行う様子を目にすることも多いようです。

彼の良いところは、他の選手がやっているからと言う理由で飛びつくのではなく、そもそもそれを行う意味は何かとか、自分にとって本当に必要な知識でありトレーニングなのかを知らないままに行うことは得策ではないと考えたことです。

ですから私の指導したことが、単なる方法論ではなく、人間の体を考える上での基礎となっている理論であることはすぐに理解してくれました。

こうして様々なタイプの選手と接することで、私の対応力というか指導する側としての心構えや言葉の選び方まで、本当に勉強になります。

浅野選手は22歳(11月に23歳になります)、世界で戦う上でまだ若いからとは言っていられない年齢です。
彼の大きな武器であるスピードを最大限に活かすためには、日常の体のケアは絶対条件で、加えてまだまだ身につけてもらわなければならない体の使い方が沢山あると感じました。
彼が望んでくれれば、私が専属トレーナーとしてドイツに行っても良いと思わせてくれるほどの大きな可能性と潜在能力を持った選手です。
私が直接関わった選手でそう思わせてくれたのは浅野選手が初めてです。
私が直接世界を相手に仕事ができるかも、そんな夢を見させてくれました。

現実にはあり得ないことでしょうが、こうして夢のようなことを考えているからこそ、色々なアイデアが湧いてくるのが私の常ですから、浅野選手との出会いを私も糧にして、さらに成長して行きたいと思います。

相手のために何をどう伝えれば良いのか、やればやるほど自分の中でもっともっとという欲が出て来ます。
もう自己満足ではなく、私が行った指導で選手がどう変わって行ったか、そこまで追い求めて行くことで、西本理論を学び、同じように選手のために指導して行きたいと奮闘してくれてる西本塾生たちが、胸を張って指導できるように、小さな声かもしれませんが、声を上げ続けていこうと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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