答えがないことが答え

おはようございます。

昨日一昨日と、「かわし動作」について説明してみました。
先ほど、いつも読んでくださっている〇田さんから、「かわし動作」の動きについて、コメントをいただきました。

「手首から動き始めた体のつながりが下半身に届いたとき、膝は伸ばしたままでよいのか」、という趣旨だと思います。
動き自体が難しいという感想も記されていました。

私がこのブログを立ち上げ、これまでの経験や積み上げてきた知識を、このまま自分の中だけに眠らせておくのではなく、一人でも多くの方に知っていただきたいという気持ちからでした。

しかし、ご指摘の通り人間の感覚を言葉にして伝えるということは、難しいのを通り超えて不可能に近いことだと思います。

とくに私は、自分が正しいと納得したことは、他の人にも正しいと思っていただけるように伝えることができなければ意味がないと思っていて、今まで指導してきた相手に対しては、自他ともに認める「教え魔」でした。

それにはマイナス面もあって、選手たちは自分で考えなくとも、気付いたことは私からいつでもチェックが入り、なるほどそうなんだということを指摘されることで、自らが考える力が養えなくなってしまうことです。

その時々には、すべては選手のため、なんとか選手を良くしてやりたいという気持ちだけだったつもりでしたが、今となってはそれもこれも、私自身が勝ち負けにこだわり、目先の結果を求めていたことが原因だったのだと思います。

操体法を学ばせていただいた、生涯唯一の師と仰ぐ、故渡辺栄三先生は私とは全く正反対の方でした。

初めてお会いしてからの3か月間は、私も無我夢中で、今でもどんなことを教えていただき、どんな話をしていただいたのかも残念ながら覚えていませんが、次の3か月の講習会の途中でこんなやり取りがあったことを良く覚えています。

参加している6人の方に対して、先生が右手を伸ばした状態から肘を曲げて見せたのです。
そしてその動きに対して、一人一人に今の動きを言葉にしてみてくださいと言われました。

一瞬何のことか分からないという雰囲気になりましたが、ある人は右の肘が曲がりましたとか、またある人は右の手首が肩に近づきましたとか、見た目の現象を言葉にしました。

そういう表現が底をついてくると、右の手のひらが空気を包み込んでいくように動きましたとか、体全体がやさしい気持ちになりましたとか、筋肉と関節の運動からは全くかけ離れた表現まで飛び出してきました。

先生はその言葉一つ一つに対してニコニコしながら頷いて、「ほぉうまい表現をされますね」とか、「そういう風に見えましたか」とか言われるだけなのです。

私を含めて6人の口からは、いったい何通りの表現があるのだろうと、自分たちでも不思議なくらいの言葉遊びが続きました。

それでも最後は先生から「この質問の答えはね」と、我々が期待する説明があると全員が思っていたはずです。

ところがまったくそんな気配も感じられないまま、次の何かに話は変わっていました。

今となれば、人間の感覚はみんな違っているのだし、それを正しいとか間違っているとか、正解はこれなんて決めつける必要もないんだよ、ということを教えていただいていたんだろうなと思えるのですが、当時はおそらく参加者全員が今の会話は何だったんだろうと思っていたはずです。

その後何人かで昼食を食べに行ったとき、やはりそのことが話題になり、本当は答えがあるんでしょということになった時にも、自分の見えているものと人が見えているものは同じようで同じではないし、感じ方もそれぞれ違うことを認めることからしか始まらないのかな、とここでも断定的な言葉は使われませんでした。

そんな先生との時間を過ごす中で、自分の体との対話という感覚や、相手の体と融合していく感覚を学んで行ったような気がします。

そんな先生の弟子であると自認する私が、スポーツの世界で生きていくために選んでしまったのが、今日の練習に参加させる、明日の試合に出場させるための、目先の効果を発揮するための、操体法もどきの施術でありトレーニングだったのです。

もちろん効果には自信がありましたし、選手のためになっているという自負もありました。

しかし、選手とトレーナーという立場を離れた時、私が先生に抱いていたような気持ちを持ち続けてくれる選手はいないと思います。

当たり前と言えば当たり前です、その時その時選手を支えることが私の仕事だったのですから。

〇田さんから頂いたコメント、もっともだと思います。
私が感覚をああだこうだと言葉で説明しようとすればするほど、人は言葉に従いさらに言葉を求めます。

自由にやってくださいでは何のことか分かりません。

矛盾しているようですが、私の精一杯の言葉の説明から、大いなる野次馬根性を発揮して、「これは何だろうどうやって動くのだろう」そう思っていただけたことだけでも、十分私の思いは伝わっていると思うのです。

あとは、私がこう言ったとか、自分はこう思うとか、すべての既成概念も知識も情報もすべて捨てて、体がどうやって動きたがっているか、その一点だけを頭の片隅に残して動きを楽しんでください。

これをやったからどうなるとか、「かわし動作」が分かったとか分からないとか、そんな実利も越えたところに動きの本質が見えてくるかもしれません。

いつかご一緒に「からだ談義」をさせていただきたいですね。



追記です。

今日はありがたいことに、お二人の方からコメントをいただきました。
拙い文章ではありますが、真剣に読んでくださっている方がいらっしゃること本当に嬉しく思います。
まとめての返信になりますがお許しください。

私の書いていることは、このブログのタイトル通り、私が話しておきたいことを書いています。
実利を求めて、こうすればこうなるてきな内容を期待してくださった方には、もの足りずまどろっこしい小理屈に聞こえているかもしれません。

しかし、世の中こうしてインターネットの時代になって、知りたいことがすぐに調べられる環境になりました。
本質的な理解は別として、必要なことに事足りればそれで良しの風潮となっています。

我々は人として、人の間に暮らしています、だから人間なのです。
人と人とを結ぶものは、心でありそれを伝えるのは言葉だと思います。
だから難しいのです。

どんなことでも知らなければ仕方がありません。
でもせっかく知ってしまった知識なら、それを生かさなければ勿体無いと思いませんか。
知って実行して納得したら継続する。
これ以外に自分を高める方法はないと思います。

指導する立場に立てば、相手が自分と同じ理解に達することは現実不可能かもしれません。
しかし、自分が指導したことを糧にして、いつか自分以上の人間に成長する可能性は無限大にあると思います。

それを信じて、自分も負けずに成長する気構えを持って接していけば、そこで実を結ばずとも、いつかその経験が生かされる時がくると信じましょう。

私こそ失敗ばかりの人生ですが、今度こそ今度こそと頭の中で繰り返しているうちにこの歳になってしまいました。
まだまだ頑張り続けます。
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いつも楽しく、そして考えながら読ませて頂いています。
テニスインストラクターをしています。
言葉で伝えることの難しさを感じています。動きを見せても伝わらないこともあります。
本当に人に伝えることは難しいです。
外観が同じように真似をしてもらっても、体が同じように動いているか?不安です。
西本先生のように文字で伝えることはもどかしく、ストレスが溜めるような気がします。
しかし、今までに触れられなかった、考え方に触れられる喜びを感じでいます。
これからも宜しくお願いいたします。
  • 2013-08-03│21:08 |
  • メタBOSS URL│
  • [edit]
こんにちは
いつも読まさせていただいています。確かに、完璧に理解はできてないと思いますが、ゆっくり西本さんの言葉を自分なりに何度も考えて体で味わってます。たぶん、なかなか簡単な話じゃないと思いますが、こうやって体と向き合うことだけでも、大きな体験になってます。西本さんのいろんな視点や考えからの言葉は、いろいろな気持ちが伝わってきます。とおくはなれてますが、想像でいろいろやってみます!少しづつ少しづつ理解していけたらと思っています。

と、お伝えしたかったので書いてしまいました!これからも宜しくお願いします。
  • 2013-08-03│17:08 |
  • 大吉 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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