刺激と反応

講談社からうれしいお知らせが届きました。

拙著「朝3分の寝たまま操体法」が、またまた増刷となり、版を重ねて第10刷になったそうです。

2004年7月の初版から昨年まで、すでに7冊を数えていましたが、今年はフロンターレ効果で早々に2回の増刷がありました、まさかもうないだろうと思っていたら増刷のご連絡をいただき、買って読んでくださった方々にはお礼の言葉もありません。

講談社プラスα―新書というシリーズの一冊として出版され、ちょうど9年が過ぎました。
毎月3・4冊は出版されている人気シリーズで、当然書店の棚では見かけることもなくなったので、ネットで買っていただけるのでしょうか、本当にありがとうございます。

冒頭の佐々岡投手のフォーム改造の取り組みの内容も、後半の体への思いも、今でも十分通用する、新しいとか古いとかではない大事なことが書かれていると、自分でも時々読み返しています。

何度目かの再出発に、これまで頑張ってきたご褒美かなと、このタイミングの増刷を心から嬉しく思います。

さて前回は、体を治してくれる究極の存在は「血液」であるということを書きました。

では私にその血液をどうこうすることができるのでしょうか。

私の考え方の基本になっている、橋本敬三先生の操体法の基本理念に「息」「食」「動」「想」そしてそれらを取り巻く「環境」の中で我々は生き、生かされているという言葉があります

長くゆったりと息を吐けることが「長生き」に通じ、贅沢や見栄のためではなく、体のことを一番に考えた「食事」をいただき、生まれ持った原理原則を外れないように「動き」、好いことばかりではない毎日の中でも前向きな「想い」を持ち続け、それらを逃げることのできない、今ここに生きている「環境」のなかで、バランスよく生きていくことが大切なのだと言われています。

宗教ではありませんが、人間がみんなこういう風に考えて生きていければ、争いごとのない平和で暮らしやすい世の中になると思うのですが、いかがでしょう。

これらはすべて自己責任において行うことです。

誰かに強制されて息をするわけでもなく、食べたくないものを無理に食べる必要もありません、スポーツを職業にでもしない限りは、体をいじめるなどという表現を使うほどの運動も必要ありませんし、考え方も見方を変えれば下を向いてばかりいる必要もありません。

そうした要素を前向きにとらえながら、今与えられた環境の中で一生懸命生きているのですが、それでも悲しいかな人は必ず歳を取っていきます、病気にもなります、痛いところも出てきます。

それも自然の摂理と受け止められる人と、いつまでも若いころの健康体を欲張る人とでは「想」の部分で大きな違いが出て、本来改善できる部分にまで影響を及ぼすことにもなります。

その中で私がお役にたてることは、今まで生きてきた経験と、こういう仕事を通して感じたことを、ほんの少しではありますが「想」の部分としてお話し、まずは自己責任の部分に気付いていただくことから始まります

そのうえで「動」の部分に、操体法の施術行為等を使って、体そのものに働きかけます。

またややこしい言い方になりますが、ここでもやはり「動」を操作して体のバランスを整えるとか、骨盤を調整すれば体がよくなるというような言い方は違うと思うのです。

せっかくきちんと考えられた食事をとって、新鮮な空気を胸いっぱい吸って、これ以上ないという状態の血液であったとしても、心臓の拍動とともに全身に運ばれて、一つ一つの細胞を満たしていくためには、それを運ぶ血管の通り道を整備してあげなければ、宝の持ち腐れということになります。

血管は神経とともに、全身に張り巡らされたネットワークです。

たった一つの卵細胞が分裂して、こんなにも複雑な人体が構成されていくことは、私の頭脳ではどれだけ説明されても理解不能ですし、本来は踏み込んではいけない、侵さざるべき分野なのではとも思ってしまいます。

その血管の通り道を想像していただくと、太い筋肉の部分であれば神経と血管が束になって通っていけるスペースはありそうです。

しかし関節の部分を見てください、いくら肉付きのいい人でも関節の部分には筋肉が腱という組織に変わって細くなっていますから、だれが見ても腕や太ももに比べれば、通り道は狭くなっています。

ここをうまく通り抜けなければ、良い血液も隅々まで行きわたりづらくなるとは思いませんか。

ですから調整という意味では、全身の関節部分が緩んでくれることが一番の目安であり、目的という感覚で施術を行っています

長々書きましたが、実はここからが今日の本題です。

体に対する施術は、一言で言ってしまえば筋肉や神経に対する「刺激」です。

そういう意味では、鍼も灸もマッサージもすべて刺激です。
施術行為というのは、与えた刺激に対して生体がどういう反応をしてくれるかを計算できて、初めて施術なのです、ただ何かができるというだけでは、言葉は悪いですが素人のかたと同じなのです。

子供がお父さんお母さんの肩をたたいてくれるという行為はとても気持ちがよく、純粋に心のこもった尊い行為ですが、その叩くという刺激が、そのあと肩の筋肉にどういう変化をもたらすかなどということは、お互いに考えるはずがありません。

しかし、私が体に触れ何かを行う行為をしたならば、そこにはきちんとした計算がなされているのです。

それが時として、受け手には過剰な刺激ととられたり、または物足りないと思われたり、まだ痛みがあるにも関わらず、さらに痛みが増すように感じる行為だったり、その時その時の真剣勝負です。

20年以上も前の話ですが、私のいとこが当時お世話になっていた会社の社長さんが、ひどい腰痛で困っているので何とか診てくれないかという電話がありました。

仕事の都合で、私の営業時間前に診てくれというわがままな言い分でしたが、いとこの顔を立てて施術を行い、翌日の予約を取って帰ってもらいました。

私の感覚では、もうその一回で、ほとんどその方の仕事に影響が出ないレベルまで改善できたので、明日来てもらえば、もう来なくてもいいだろうと考えていました。

ところが翌日来られたその方の腰の状態は、前日よりも悪くなっていました。

すぐにピンときて、どこか別のところに行かれませんでしたかと尋ねると、案の定いつも行きつけのあんまを専門にしているところがあって、今回はそこでよくならなかったのでここに来たが、楽になったので帰りにその足で、またそこに行ってもんでもらったというのです。

たぶん、何でも言うことを聞いてくれてお金さえ払えば1時間でも2時間でも揉んでくれる、わがままが言えるところなのでしょう。

私の与えた刺激はものの見事に消され、全く想定外の体となって翌日私の前に現れたというわけでした。

本人に悪気はなかったと思います。
なかなか良くならなかった腰痛が、私の施術でたまたま楽になった、ならばいつものところでもっと時間をかけてもらえばさらに良くなるだろう。

足し算の考え方ですね。

しかし現実には足し算では違う答えが出てしまいました。

同じような例はたくさんあります。
プロの組織であれば、例えば私が1時間かけて何かを行ったとしても、それだけでは満足してくれません。

次は何百万円もする治療機械で1時間電気治療をするとか、また別の機械でも時間をかけるとか、さらにトレーナーからマッサージを受けるとか、これまた足し算の考え方で、良かれと思うことは何でもやることが早く良くなることだと思い込んでいるのです。

すべてを任せてもらうには立場も中途半端で、時間も足りませんでした。

それでも私は自分の加えた刺激の反応を計算しながら、自分の腕を信じて、体がどう変わってくれるのかを考えることの楽しさを棄てることはできません。

加える刺激の量と、その反応まで計算できて、それを本人に納得させることができて、一流とか本物の施術者と呼ばれるのでしょうね。
まだまだ先は長いようです。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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