刺激と反応その2

30年前、何も知らなかった私に「操体法」を教えていただいた「渡辺栄三先生」から学んだことで、心に残っていることをもう一つ書いておきます。

一つ目はすでに書きましたが、「足指もみ」を、自分の子供の体を借りて練習しなさいというものでした。

本当に気持ち良くなければ、すぐに体を起こして逃げてしまう幼い子供が、もっと続けてくれというほど上手になれば、誰にでも通用する「足指もみ」の免許皆伝、ということだったと思います。

腰が痛い時はこう、膝が痛いときはなどという指導は、先生の口から一度も聞いたことがありませんが、この言葉だけはなるほどこれがプロの技かと、深く印象に残った言葉があります。

「寝違えて首が回らなくなった人に対して、首を触って治せるのは誰でもできる、本当に体の仕組みが分かったのなら、触るのはくるぶしから下だけ、それで治せるようになれば、どんな状態にも対応できるよ」

最初はまったく意味が分かりませんでしたが、故郷で開業していた頃、まさに首が回らなくなって来院された方に対して時間をかけて足指もみをしている時、なるほどそういうことだったのかと、先生の言葉を思い出し、改めて体の仕組みの妙を体験しました。

右にも左にもどちらに回しても痛みがあり、ベッドの上で仰向けになっていただいても、顎があがり目線は真上よりも遠くにあり、首は左に傾いたまま苦しそうに横たわっていました。

枕の高さをタオルで調整することで、なんとか寝ていられる状態でした。

その体を、無理にゆするのではなく、その方の体が自然に波を打つように、丁寧に丁寧に「足指もみ」を続けること30分くらいたった頃でしょうか、枕代わりのタオルが必要なくなり、気がつけば目線も真上を向き、首の傾きもほとんど真っ直ぐになっていました。

「足指もみ」は通常10分から15分かけて行います。
それも、できるだけのんびりしていただいて、体と心をリラックスしていただくために、途中からは話しかけることもせず、静かに揺れを楽しんでいただくのですが、その時は、痛みに意識を向けさせないために、話題を見つけては雑談をしていました。

そうは言いながら、私はその方の様子をしっかり見極め、痛みを与えないように指もみを続けながら、この後どういう操法で体と向き合っていこうかと、全神経を集中した状態を続けているのです。

ですから、少しずつ表情が緩み、こわばっていた体がゆったりとしてくることも、文字どおり手に取るように分かっていました

30分くらいして手を止め、今どの辺りが見えていますかと問いかけると、あれ最初と全然見えているところが違うと言われ、こちらが言う前に首を左右に動かし、「あれ動いた」と、びっくりされていました。

もちろん、それで終わりではないのですが、もし最初から首が痛くてどうしようもないと言ってこられた方の首を触って、さあこれから何をされるんだろうという状況を作ってしまったら、その方の体も心も、こんな短時間ではほぐれてくれなかったのではないでしょうか。

ここまでくれば、私に任せておいて大丈夫だろうという、安心感も生まれているでしょうから、全身を整えていく操法に自然に移行できて、ご本人には何をされて何が起こったのかも分からないうちに、とりあえず首はくるくる回るようになってくれました。

首をどうこうするどころか、本当に足指もみだけで、半分以上目的を達することができたのです。

なるほど先生の言われていたことはこういうことだったんだと、嬉しくなったことを覚えています。

もちろん寝違えと言われるような状況になっている体は、全身が驚く程バランスを崩し、もし首が痛くなくても腰や肩や膝が痛いと言われてもおかしくない状態でしたが、すべて含めて丸く収まってくれました。

私が専門学校に通っている頃に、後学のために様々な施術を体験しましたが、その中で操体法を選んだのは、自分がやってもらうのならこれしかないと思ったからです。

まったく無理なことをさせられない、痛みを我慢してなどという感覚とは真逆で、気持ちのいい方へ動けという、こんなことでと思ってやってみると、体の変化がお互いに確実に実感できる。

もうこれしかないと思いました。
受けっぱなし、やりっぱなし、やることはやりましたでお金を払って帰るのはどうも違うような気がしたのです。

寝違えを足先で治す、そう聞くと手品のようですが、触っているのは足先でも動いているのは全身です。
もちろん首だって動いています。


手のひらの大きさには限度がありますから、全身をいっぺんに触れるなんてできません。
だから触っているのは足先と言いましたが、実は触っているのは体そのものなのです。

だから、腰という部分を触らないで腰の痛みが軽減しても、何にもおかしくないし、足先を触って寝違えが改善されても何の不思議もないのです。

これが人間の体の凄いところです。

だから足し算で考えないでほしいのです、自分の体が良くなろう元に戻ろうとする流れを止めないでほしいのです。
その流れを作るお手伝いを、私がさせていただいているのです。

刺激はどこからでも入れられるし、どこにでも届きます。

体は、丸ごと一つの存在なのですから。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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