肉離れについて

世界陸上のテレビ中継を見ながらパソコンに向かっています。

各競技にはオリンピックの他にも世界と名のつく大会がいくつかありますから、それぞれの大会全てに自分のベストなコンディションで臨むのは不可能と言ってもいいでしょう。

テレビ中継をするマスコミは、この大会こそが最も権威ある大会であるかのように盛り上げますが、陸上であればすでにプロ化されている選手も多く、大会の出場料や順位による賞金に加え、大会記録や世界記録などのボーナスが決まっていて、どこにベストを合わせてくるのかは、選手によって違っているのが現実だと思います。

日本国内の陸上競技大会はそれほど注目されませんが、ヨーロッパを中心としたグランプリ大会は観客の数も多く、注目度の高いスポーツとなっています。

なんといっても一つの競技場で、たくさんの種目を見られるのはありがたいことです。

東京でオリンピックが行われたら、是非見に行きたいと思っています。

ウサインボルト選手はスタート直前の雷雨というアクシデントにも負けずに、しっかり自分の走りで金メダルを取りましたが、予選から見てもこの大会で世界記録が出るような雰囲気はありませんでした。

本当にここに合わせてきたというボルトをこの目で見てみたいものです。

そういう意味では陸上は個人競技ですから、成績も個人の責任ということになりますが、団体競技の場合は出場する選手それぞれのコンディションがありますし、対戦相手によっても要求される動きが変わってくるので、それらを見極めて選手を起用し勝利に導く監督コーチの責任はより大きなものになってくると思います。

ケガや故障は、どんなに周到な準備をしていても起こるときは起きてしまうということは以前に書きました。

明らかに準備不足であったり、相手のラフなタックルでも、周りが見えていないためにやられるべくしてやられたように見えることもありますから、できることはしっかりやっておかなければなりません。

その中で今回は「肉離れ」について私の考えを述べてみたいと思います。

肉離れは当然ですが筋肉の損傷のことです

損傷の程度にもよりますが、まずは安静というのが常識となっています。

20年前、サンフレッチェ広島で仕事をしている時も、何人もの選手の肉離れを経験しました。

別の組織でのことですが、あるコーチから私のやり方に対してこんな言葉を投げかけられたことがありました。

早期から動かすやりかたに「筋肉の問題だからあわてない方がいいですよ」と言われたのです。

専門外の人間に私の理論を話しても理解させるのは難しいので聞き流しましたが、筋肉の問題だからこそ状況によっては予想の期間より早期の回復が可能なのです。

骨折した骨を早くくっつけてくださいと言われても、それはできない相談です。

それぞれの体の回復力を待つしかありません。

筋肉を修復してくれるのは、酸素と栄養をたっぷり含んだ血液であるということはすでに力説したとおりです。

安静にして横たわっているより、上手に筋肉の他動運動による収縮を起こさせた方が、筋肉に運ばれる血液量は誰が考えても多くなります。

ただその動かし方が難しいのです。

自動運動による収縮は、当然痛みを伴います。
自分では全く力を入れていない状態で、本人の痛みを伴わない範囲の中で関節の運動を行うことが必要なのです。

例えばビニールハウスで育てる「電照菊」の栽培のように、菊に対して24時間を72時間に感じられるように照明を調整することで、短い期間で花を育てられるように、筋肉にもどんどん血液を送り込むことで、傷んだ繊維を修復させることができるのではないかと考えたのです。

この方法には当然危険が伴います

本人が動かされることを不安がり、完全に力を抜いてくれないと、3・5・7理論の3の方向へ収縮しかけている繊維を引っ張ってしまうことになり、傷んだ繊維をさらに傷める結果となるからです。

選手との信頼関係が基本となります、この人に任せておけば何とかしてくれるという気持ちにさせることが一番です。

そして長時間動かし続けますので、こちらの体力もいりますし、雑談をして選手の気持ちを患部から逸らすことも大事な要素です。

太腿の肉離れであれば、その上で痛みを与えずに股関節と膝関節の曲げ伸ばしを続けなければなりません。

夜の試合中に肉離れを発症し、救急車で運ばれ足がつけないと車いすでホテルに帰ってきた選手が、その後3時間以上かけて行った結果、翌朝は自分の足で朝食会場に現れ仲間を驚かせ、一週間後には練習に復帰したなどということが、現実に何度もあったのです。

人間の体を治していくということの目的は、MRIなどの画像診断で、患部の炎症がなくなっていることを確認することでしょうか。

それがなくなれば何でもできる体に戻ったのでしょうか。

人間の体は痛みに対してもの凄く敏感で、例えば暗闇で画びょうを踏んでしまったとしたら、その痛みを体が覚えてしまい、完全に傷が癒えた後も、同じ状況に遭遇すると、絶対に画びょうなどないと分かっていても歩き方がおかしくなったりします。

以前説明した捻挫が癖になるのとは違う意味で、肉離れもケガをした時と同じような状況におかれると、またやるんじゃないかと身体が反応してしまうことがあります。

私は痛みが完全になくなり、画像に影も形もなくなってから、さあリハビリに取り掛かりましょうというやり方では、その体が怖がるという本能を消すことが難しいと思うのです。

ですから、関節の自動運動ができない状況でも、まったくの他動運動なら筋肉が動かせるのであれば動かしますし、多少痛みがあってもこれくらいの強度なら歩けるというのなら歩かせました。

「自分では動かせないけど、動かしてもらったら動いた」「まさか今日は歩けないと思ったけど、なんとか歩くことができた」「これ以上の角度は不安だけど、ここまでなら力が入るからこのトレーニングはやってみよう」そういうふうに、体との対話を繰り返しながら、自分の体を作り直していくというやり方をすれば、ゼロから積み上げていくよりずっと本人の不安感が少なく、これができたんだから次はこれもできるだろうという、積極的な発想でリハビリの強度を上げていくことができていくのです。

専門でない人間も含めて、誰が見てももう大丈夫です、という状態でなければ、何にもさせられないというのであれば、我々の仕事はいらなくなります。

私のモットーであった「ケガする前より逞しく」で、選手を復帰させられたのは、こういう考え方に基づいた私独自のアプローチ法があったからです。

一般の方がこの方法を応用するのは、残念ながら非常に難しいと思います。

自動運動ではなく、完全な他動運動で筋肉の繊維を刺激して血流を増やす、そう簡単な技術ではありません。

不幸にして肉離れを起こしてしまったら、傷んだ筋肉を治してくれるのは、酸素たっぷりで栄養素をたくさん含んだ血液と時間が薬だと肝に銘じて、間違ってもたばこを吸うようなことはせず、しっかり呼吸してしっかり食べて、自己治癒力を信じましょう。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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