イチロー選手が示してくれたもの

日米通算4000本安打を達成したイチロー選手に対して、野球関係者だけにとどまらず、多くの方々が賞賛の言葉を寄せています。

多少でも野球が分かる人であれば、その数字の偉大さは分かるはずです。

インタビューで本人が言っていたとおり、打席を与えられる環境さえあれば、数年後にはピートローズ選手の記録を抜いて、世界一の安打記録を達成することも夢ではありません。

ただそれぞれのチームによって事情が違いますから、限られたメンバーの中に40歳にならんとするイチロー選手を、スタメンで使い続けてくれるチームがあるかどうかは分かりません。

現在の所属チームであるヤンキースでも、定位置であった1番ライトでスタメンに名前を連ねることはほとんどありません。

本人も、球場入りしてメンバー表を確認し、自分の名前を探すことから一日が始まり、気持ちと身体をフィットさせていくのが難しくなってきたと述べています。

私たち家族が神戸に住んでいた時、家族でグリーンスタジアム神戸に「オリックス対近鉄」の試合を見に行ったことがありました。

前年に、指導していた三菱重工広島から近鉄に入団した「磯部公一」選手を激励するためでした。

バックネット裏の高いところに座りましたが、下まで降りて行って大きな声で「いそべー、がんばれー」と叫んで、本人が軽く会釈して応えてくれたことを覚えています。

そのあと、席の後ろの通路でどこかで見たような人が立って話をしているのに気づき、よく見ると、「父ロー」と呼ばれている、イチロー選手のお父さんでした。

その頃には頭角を現し、すでに一流選手でしたが、まさかここまでの記録を残す選手になるとは正直思いませんでした。

イチロー選手の場合、野球の世界でよく言われる「線が細い」体だったことが、将来性という意味で疑問視されていたように思います。

「振り子打法」と呼ばれたバッティングフォームにも、ダメ出しをする指導者が多かったとも聞いています。

野球選手の生活パターンは完全な夜型で、ナイトゲームが終わった後に食事をしたり飲みに出たりという生活になりますから、体が大きくなるというよりも、単純に太る要素ばかりが目についてしまいます。

俗に、野球選手と水商売の女性のダイエットは難しいと言われるゆえんです。

今現在でも、ユニフォームを着た後ろ姿を見て、もう一回りお尻回りが大きくなると良いピッチャーになるとか、打球が飛ぶようになると、当然のように発言する、元選手の解説者がたくさんいますが、イチロー選手の活躍を22年間も見続けてなお、同じことを言い続けられる神経はどうなっているのでしょうか。

今年も地元球団のある選手が、トレーニングで肉体改造をし、一回り大きくなったことがスイングのスピードを上げ、飛距離を伸ばし、安定した成績を残せるようになった一番の要因だと、盛んに言われていますが、体つきだけは大きくなっても成績が伴わない選手のことには一言も触れてくれないのはなぜでしょうか。

とにかくイチロー選手は、これまでの野球人の常識からは計り知れない存在で、解説者の方々もイチロー選手レベルの思考回路を持つこと自体無理なのではないでしょうか。

野球に対する姿勢というのは、ユニフォームを着ている時は当たり前で、プライベートな時間も含めて、というより、プライベートな時間こそどう過ごすかということが、超一流になれた理由なのだと思います。

お腹を突出し、たるんだ二重あごを恥じることもなくグランドに立ち続ける日本のプロ野球選手を、イチロー選手はどう思っているのでしょうか。

アメリカに渡ってから、故障者リストに載ったのがたったの1度だけ、こんな選手は他にはいません。

その秘密を探ることこそ、それほど大きくない日本の選手が、野球だけではなくそれぞれの競技の中で、世界に伍していくための大きなヒントになることは、誰の目にも明らかだと思うのですが。

その方法論の一つとして、イチロ-選手がずっと取り組んでいるトレーニングメソッドがあります。
鳥取に本部を構え、小山裕史さんが運営する「ワールドウイング」というトレーニングジムで行われている初動負荷理論という考え方に基づいた体の使い方です。

そのために考案された機械を使いますので、系列のジム以外では同じマシンに出会うことはできません。
私も浅からずご縁があって、2度鳥取にお邪魔したことがありますが、各競技のトップレベルの選手たちが真剣にトレーニングを行っているところを見させていただきました。

私のような個人で作る施設程度の規模では、スペースの問題もありますし、高額なトレーニング機械の購入や、そのための研修費用も捻出できませんので、ベースになっている動き作りという意味では大いに参考にさせていただいていますが、いかに既存の機械を使って自分の理想とする動きを追及するかというのが、私にとってのテーマというか目標になっています。

日本どころか世界に羽ばたくという意味が、ワールドウイングという名前にはあると思うのですが、私は一般の人たちに対して、お一人おひとりの目標を達成していただけるよう頑張っていきたいと思います。

それにしても、日本のスポーツ選手たちに意識はいつになったら変わっていくのでしょう。

マリナーズで同僚だった長谷川投手が、イチロー選手のフリーバッティングを見て、飛距離に驚いたというお話をされていましたが、けっして力がないわけではなく、十分遠くへ飛ばせる体の使い方、パワーも兼ね備えてのあの体なのです。

ここは一発長打が欲しいという打席では、本当にスタンドの中段まで運ぶような打球を見せてくれます。

見かけの体の大きさや、トレーニングで扱える重量と、自分の体を使いこなせることとは意味が違うものなのです。

まさに「体作りから動き作りへ」の見本のような選手です。

普段イチロー選手に対して、個人的にはファンだとか特に注目しているわけではないと言っている私ですが、今日ばかりは、褒め称える以外言葉がありません。

もちろん面識はありませんし、一度会ってみたいということもありません。
彼が見せてくれる結果だけで、十分すぎるインパクトを私に与えてくれますから。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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