数値か感性か

昨日今日と広島にも雨が降っています。
私の住んでいる場所は不思議なというか面白い現象がありまして、北側の廊下から市内の中心部を見ると明らかに雨が降っているのが分かるのに、南側のベランダから宇品港方向を見ると、まったく雨が降っていないということがよくあるのです。

旧広島市民球場で行われているカープ戦をテレビで見ている時も、直線距離にして4キロほどしかないのですが、雨粒がはっきり見えて5回までできるのかななどと家族で話をしながら見ている時、ふと窓の外を見るとまったく降っていないということもよくありました。

海が近いせいでしょうか、冬になると北側の山々には真っ白に雪化粧がされますが、この辺りが積もることは年に数回のことです。

今年の夏の平均気温は全国で何とベスト5という、あまりうれしくない上位入賞ですが、気候温暖、地震も少なく、瀬戸内ですから津波の心配も少ない、静かで穏やかな場所に暮らしています。

数か月間だけでしたが、毎日が緊張感の中で責め立てられるような感覚で暮らしていた日々が、夢か幻のように感じています。

ちょうど今、Kさんから新しいコメントが届きました。

管理者以外閲覧禁止のマークがついていましたので、全文をご紹介できないことが残念ですが、いただいた内容について触れてみたいと思います。

Kさんはあるウインタースポーツで長い競技歴をお持ちで、競技者として日本代表レベルまで到達され、現在は選手をサポートする、スポーツトレーナーをされている方のようです。

私は残念ながら行ったことはないのですが、選手をサポートするために作られた、横浜にある医科学センターで測定した様々なデータをもとに、トレーニングの目標を立てシーズンに向けての準備を行われていたそうです。

いわゆる科学的トレーニングというものの見本のようなメニューが組まれ、こういう風にやればこうなるという、まさに言葉は悪いですがモルモットにされて、結果を求められたのだと思います。

私が相手にしてきた選手たちでも、代表に呼ばれると、必ずこの身体能力の測定というものが行われているようでした。

それが最低でも選手本人や所属チームに、きちんとフィードバックされてくれれば、やるなとは言えないのですが、シーズン中の時期にもかかわらず、選手の負担になるような測定種目があり、慣れた選手はまったく本気で測定を受けないという話も聞いていました。

今回招集したメンバーの平均値はいくつで、前回に比べてどうしたこうしたと、またどこかの学会か講演会で、チームドクターかトレーナーが発表する材料にされるんだろうなと、帰ってきた選手とよく話をしたものです。

本来であれば、チーム独自ではなかなか測定することが不可能な種目を測定してもらえれば、選手のために生かす方法もあったと思うのですが、残念ながら私の経験の中ではそういうことはありませんでした。

こういう最新鋭の測定機械が備えてあって、こういうレベルの人たちに対して実施し、こういうデータを持っているというのが、ああいう組織の目的になっているとしたら、まったく意味のないことだと思います。

本当にあれは何のために行われていたのか今でも不思議です。

Kさんんも選手生活の後半には、試合の2.3日前になると、システマチックなトレーニングを離れ、経験則による独自の動きを取り入れたトレーニングに移行させていた、と述べられています。

さらに気づけば、そういうトレーニング方法はすでにオーストリアのスキーチームが行っていたそうです。

私が知らない世界の情報、経験談を教えていただきKさん本当にありがとうございました。

同じようなことを経験し、感じている現役選手は、少なくはないと思います。

言われたこと決められたことだけをやって、トップレベルの選手になれるわけはありません。

技術的なこと基礎的な運動能力を鍛えるためのトレーニングのこと、そして戦術的なことを含めて、確固たる信念を持って日々取り組まなければライバルに勝てるはずはありません。

「あいつは〇〇に対して一家言持っている」と言われることがありますね、悪い意味にとられると、人のアドバイスに聞く耳持たない偏屈な頑固者、になってしまうのですが、そうならないためには、数値で表されたデータには見えてこない部分を共有できる自分以外の存在は、選手にとってこれ以上ない味方になれるのではないでしょうか。

私はそういうトレーナーをずっと目指してやってきたつもりです。

それが時代とともに、医科学センターのような施設が整備され、データが読めて機械の操作ができることがトレーナーの能力の指標のようになってきました。

私には分かりませんが、そうであるならば、データを入力すればあとはすべてパソコンが指示をしてくれるソフトだって可能になってくるでしょう。

元広島の高木選手のアキレス腱断裂のリハビリを行っている時、当時の監督から健側と患側の筋力データの比率が80%にならないと、ピッチの中での練習に入れないと言われました。

彼はそういうことを知識として学んできたのでしょう。

しかし現実には、彼の健側の筋力はチームの誰よりも高い数値を示し、患側のリハビリを長期間にわたって行っている間も、休んでいるどころか、さらに高い数値になっていたのです。

患側のトレーニングをどんなに行っても、健側に追いつけるわけがないのです。

それでも80%という数字にこだわる彼に、では健側に1か月ほどギブスをまいて筋力が落ちるのを待ちますか、と皮肉を込めて迫りました。

もうその時点では、どんな動きにも対応できる準備はできていたし、動きの中で自他ともに左右差を感じることのないレベルに達していたのです。

「機械がサッカーやってるんじゃないぞ」って、さすがに目の前では言えませんでしたが、独り言では声に出していったような気がします。

リハビリ期間中に、ランニングをするときには、私は必ずすぐ後ろをついて走りました。

体のバランスや足の運び具合、そして彼の息づかいを感じながら走るのです。

一定の場所で待っていて、遠目に見える動きでは正確な動きは見えませんし、通り過ぎる瞬間に声をかけても、かなり苦しくなっても強気な返事をする選手と、まだまだいけるのに弱気な返事をする選手がいます、性格の違いです。

ですから付かず離れず、すべてを把握するためには後ろを付いて走るしかないのです。

トレーニングの機械も治療機械も、どんどん進んで行くのでしょう。

でもそれを使う対象は生身の人間です。
数字が改善してほしいのではなく、選手が思い切って動けるようになってほしいのです。

お互いが数値や画像だけに頼るのであれば、これから先もっともっと故障者は増え、復帰は遅くなるでしょう。

久しぶりに仕舞い込んでいた思いを吐き出した文章になりました。
スポンサーサイト

Trackback

Comment

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

最新記事

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR