伸筋の重要性

屈筋よりも伸筋に重きを置くのが私の理論の根幹であると言いました。

そのこと補足する意味で、人間はなぜ長い時間立ったままでいられるのかを考えてみます。

どんな動作をするときでも、関節を真っ直ぐ保つことも曲げたり伸ばしたりすることも、すべて筋肉の収縮による運動です。

曲げ伸ばしにはそれなりの力を発揮しているから疲労してしまい、長くは動作を続けられないけれど、立ったままなら特に力を入れていないから大丈夫なんじゃないですか、と思われがちですが果たしてそうでしょうか。

ためしに片足をほんの少し浮かせて、立ってみてください1分間立っていることも難しいのが分かると思います。

両足でも目をつぶって立ってみたらどうでしょう、こちらも目を開けているときに比べたら明らかにバランスがとりづらく長い時間はやはり難しくなります。

人間はもともと四足歩行の動物で、それが二本足で直立して生活できるようになったわけですが、他の動物にはこの二本の足で立つということがほとんどできません。

進化の過程で、骨格や筋肉の構造も大きく変化し、人間だけに与えれた能力です。
我々が普段特に意識しなくてもまっすぐに立っていられる、ここに大きな意味があるのです。

関節を伸ばした状態で維持しておくためには、伸筋が働き続けていなければなりません、関節をロックして曲がらないようにしているわけではないのです。

もしその伸筋たちが、屈筋のようにすぐに疲労してしまうような性質のものだったら、長く立ち続けることなどできるはずがありません。

微妙にその発揮する力加減を調整しながら、最低限の筋力発揮でその目的である立っているという行為を継続してくれているのです。

トレーニングを継続して筋肉の肥大が起きると、自他ともにその効果を実感できますが、そこで目立っているのはほとんどが屈筋なのです。

筋肉に過大な負荷をかけ、何年もかけて作り上げた肉体美、大きく盛り上がった胸の筋肉、肘を曲げた時にできる力こぶ、お腹にはくっきりとラインが入り板チョコのように割れた腹筋、これらはみんな屈筋の仲間です。

そして鏡に映る自分の姿として確認でき、ほかの人にも正面から向き合ってその姿を誇示することができます、素晴らしい成果です。

しかし、人間が直立して生活する唯一の動物であることを考えた時に、膝から下は後ろ側のふくらはぎ部分、膝から上は太腿の前の部分、上半身は背中側の部分と、大きく3か所が裏、表、裏と挟みあうように体を前後に支えることで直立を維持しているわけですから、その逆側の筋肉をあまりに重要視してしまうと、本来の体の仕組みから外れてしまうことになります。

体の屋台骨となっているのは言うまでもなく背骨です。

この背骨は体の左右でいうと真ん中に位置していますが、前後で考えると背中の皮膚ぎりぎりの後ろ側にあって、けっして筒状の体の真ん中にはありません。

その背骨がゆったりと軽いS字カーブを描いて骨盤の上に立っているためには、体の前側の筋肉には必要以上に頑張ってほしくない、とは思えませんか。

いや後ろ側の筋肉だって十分鍛えているから大丈夫、そうでしょうか。

近頃と言ってもだいぶ以前からですが、姿勢の悪い人が目立ちます。というより姿勢がいいと感じる人が少ないように思います。
私は新しく知り合った方に、必ずと言っていいほど「姿勢がいいですね、何か気を付けているんですか」と言われます。
長い年月、自分の理論に沿ったトレーニングや体の使い方を意識してきたので、もうそれが当たり前になっているだけで特にそんな意識はありません。

日本だけではないと思いますが、子供が生まれてハイハイができるようになると、親は一日でも早く立って歩いてほしいと願ってしまい、その速さが成長の証のように思ってしまいます。

人間以外の動物が、生まれてから一年間も歩くことができないとしたら、天敵の餌になって生命の危機となるでしょう。

しかし人間はそうではありません、二本足で立つ準備に一年間の猶予をもらっています。

そのハイハイの時期こそ、二本足で立った時に背骨をしっかり支え姿勢を維持するために、最も重要な背中の筋肉の成長の準備をする最も大事な時期なのです、早く立たせてはいけないのです。

ハイハイ運動、思い出してください、手のひらと膝をついた四足歩行の姿勢で、頭を持ち上げることで背骨が適度に反って、背中の筋肉が自由に動いているのが分かると思います。

背骨を介して骨盤とつながる股関節、そして肩甲骨の自由な動き、これこそ人間が本来与えられた能力を生かした運動なのです。

私は幼児教育の時期に、このハイハイを取り入れた運動をすることが、その後の体の成長に必要なのではないかと考えています。もしかしたら頭の成長にも関係があるのではとも思っています。

私の伸筋優位のトレーニング理論はまだまだ続きます。
スポンサーサイト

Trackback

Comment

No title
西本さんのブログ勉強もかなり進んできました。
西本理論の基本が少しづつ見えてきましたが、
まだまだ、自分の中に落とし込むには時間が必要な状況です。
ブログを何度も読み返して、体を使いながら勉強を続けていきます。

「伸筋の重要性」の中でも触れられていたハイハイについてコメントさせて頂きます。
私は、3歳から9歳の子供たちに向けて目と耳の体操教室というものを行っています。体操教室と聞くと、マットや器具などを使うと思われがちですが、一切使いません。
使うのは、体と、簡単に作れる遊び道具やボールなどです。
簡単に手に入るものを使用することで、教室に来ない時も自分で毎日できるような工夫をしています。
何でもそうですが、自分から進んで物事に取り組まないと身につかないですから、小さいうちにそのあたりを教育しています。
教室では、基本的運動動作を身に付ける事と、体を動かすことで学べる人への礼儀や尊重などの人としてもっとも大切なことを教えています。

授業の中では、ハイハイを取り入れたメニューもおこなっています。
現在の子供たちはかなり苦戦しています。
西本さんがおっしゃるように幼児教育に必須の種目だと私も思います。
ただし、ハイハイのトレーニングは膝への負担なども考慮して5歳までがベストかと思われます。
それ以降の年齢の子供たちへは、ぞうきんがけでのトレーニングに切り替えて、背中の筋肉と股関節の筋肉の連動をできるように指導しています。
西本さんの推奨する屈筋から伸筋への意識付けを、子供たちへ指導できるよう
頑張ります。
これからも、ブログ勉強を進めていきますので
ご教授何卒宜しくお願いします。

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

最新記事

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR